3月16日、参議院にて外交国家ビジョン策定プロジェクト・参議院自由民主党朝鮮半島問題プロジェクトチーム合同会議が開催され、「平和主義に基づく現実的な外交・安全保障」と題して、アジア・パシフィック・イニアティブ理事長、船橋洋一氏の講演があった。講演の要旨は以下の通り。

米国の戦略概念としての中国に対する見方が変わってきた。つい最近までは、中国は国際的なルールに馴染んで一緒にやっていける国になるだろうと米国は思っていた。しかし、ここに来て、戦後の国際秩序、即ち「法の支配」、「自由で開かれた貿易」、「国際主義」といった普遍的な価値観にとって変わろうとする「修正主義者」と中国を認識し始めた。この認識は、米国で超党派的な認識として定着しつつある。
グレアム・アリソン氏は、レーガン政権からオバマ政権まで国防長官の顧問を、クリントン政権では国防次官補を務めた人物だが、その著書で、新興国と覇権国の攻防をアテネとスパルタのペロポネソス戦争に準え、「トゥキディデスの罠」と名付けた。新興国と挑戦を受ける覇権国の間で起きる軋轢、戦争に至るまでの段階的なグレーゾーンをどう管理するかが、益々重要になる。
さて、第4次生産革命に日本が乗っていけるのかも、日本の対外戦略上の課題である。
中国は人口知能(AI)、ビッグデータ、IOT化で既に先行し始めている。例えば、中国の特許数は、既にアメリカの特許数よりも25%多くなっている。電気自動車(EV)に必要なリチウムイオン電池の中国の世界シェアは60%に迫っている。また、北斗衛星測位システムは、2020年頃までに30機あまりの衛星を打ち上げ、地球規模でシステムを完成させることを目標にしている。13
億人のビッグデータがあれば、中国は市場経済の「見えざる手」を手に入れるかもしれない。中国の地政学的な台頭と第4次生産革命に対し、日本は米国との関わりの中でどのように勢力を均衡させるか、どのように安定した秩序を形成していくのかが課題となる。

佐藤は、引き続き米国国家戦略、それに基づく安保戦略を注視しながら、東アジア情勢を見ていきたい。