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「私の夢は大人になるまで生きることです」

池間哲郎
(認定NPO法人アジアチャイルドサポート代表理事)

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三十五歳の時、異国の貧困地域における
深刻な社会問題について調査・支援を始めたのが
きっかけです。

一生運動を続けようと決断したのは、
フィリピンでの出来事でした。

マニラにスモーキーマウンテンという
有名なゴミ捨て場がありましてね。

もう撤去されていまはないんですが、
三十七、八歳の時、青年会議所の広報委員として
そこへ行ったのです。

そこにはまだ四、五歳くらいの
小さな子どもたちがたくさんいて、
生活のために一日中ビンや缶を拾って、
お金に換えていたのです。

大体夜明けとともに始めて、
日が暮れるまでずっと働いているんです。

大抵は父親を亡くした子で、母親が必死で働いても
家族の食い扶持を稼げないから働いているんです。

子どもですから、もともと体力がない上に、
慢性的な栄養不良で、しかも衛生的にも
ひどい所にいるので、ちょっとした病気や傷で死ぬんです。

十五歳まで生きるのは三人に一人といわれています。

初めてそこに行った時、
私は一人の女の子に

「あなたの夢は何ですか」

と聞いたんです。そうしたら、

「私は大人まで生きたい」

と笑顔で答えたんです。衝撃でした。

路上生活やゴミ捨て場で暮らす多くの子どもたちに
夢を聞いて回ったのですが、同じような答えが
幾つも返ってきたのです。

アジアの悲惨な事情は知っていましたが、
あまりにも問題が大き過ぎるので、
仮に自分が何かやったとしても、
何も変わらないだろうと半分諦めていたんです。

でもその言葉を聞いて、
よし、俺は一生彼らを支援する活動をやり続けようと
決心したんです。

それまでの自分は、何でも適当にやってきた人間でした。

でもゴミ捨て場にはあんな小さい子たちが
泥まみれになって、爪ははがれ、
あちこち出血しながら必死で生きている。

自分が情けなくなって、
ゴミの中でワァワァ泣いたんです。

あそこでスイッチが切り替わりました。

これから自分も真剣に生きようと。

おかげで、単にビデオ屋のオヤジでいるのとは、
百倍も充実した人生を手に入れることができました。
ですから、私にとって彼らは人生の師です。



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