ミリオン座にて鑑賞。

2021年9月、ポーランドとベラルーシの国境が舞台。ロシアともにEUと対立するベラルーシ政府は、中東からの難民を一旦ベラルーシへ受け入れ、ポーランド国境へ押し出す、人間兵器という作戦を実行する。ポーランド政府は、越境していた難民を再びベラルーシ側へ押し戻し、極寒の森の中で難民たちは命を落としていく。現在も続く状況の物語で、難民、国境警備隊、救済活動家三者の目線で描かれる。監督は「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」のアグニエシュカ・ホランド監督。前作に続き、本作でも素晴らしい作品を作った。ベラルーシ、ポーランド国境の過酷な状態に胸が痛む。お互いの国境警備隊から罵られながら、邪魔者扱いされる人々。外国人排斥、差別主義のナショナリストたちによる誹謗中傷。東ヨーロッパのリアルな現実を突きつけられる。ポーランドの法律を犯して、立入禁止区域へ向かうことについて心配する人に、活動家が発する言葉、「人を助けることは合法」。力強いその言葉に、とても感動した。映画の最後に、ウクライナからの難民は受け入れて、中東からの難民は受け入れない、ポーランド政府のダブルスタンダードが明らかにされる。この物語は、決して遠い東ヨーロッパの話ではない。日本政府も難民の人権を無視し、過酷な収容所へ閉じ込め、帰国すれば間違いなく殺される難民を容赦なく送り返す。ウクライナとそれ以外のダブルスタンダードも明らかだ。