多読書評ブロガーの石井です。

私の好きなジャンル「脳」と「人間学」について、今まで様々な本を紹介してきましたが、またちょっと切り口の違う本を発見したので紹介いたします。

脳のすごさを解説した本は世の中に5万とありますが、本書は、脳が進化の過程で、相当無駄なものを積み重ねてきた効率の悪いものであるという観点から書かれている本です。

つぎはぎだらけの脳と心―脳の進化は、いかに愛、記憶、夢、神をもたらしたのか?


最近フェルデンクライスというもののワークショップに行ってきて、こちらも面白い話があったので、後日レポートをしたいと思っています。そこで興味深かった解説は、なぜ他の動物は生まれた直後から走れたり、食べれたりするのに、母体に1年近くいながら、人間はこうも成長が遅いのかということでした。

そこでの解説は、人間は「学習」という能力を獲得するために、成長が遅いということだったのですが、本書では、その成長が遅い理由を、脳の構造の観点から解き明かしてくれています。


以下、抜き書きまとめです。


■脳の発達


「遺伝子と環境の相互作用」


要因は主に三つ


一つは、ニューロンが処理の遅い、信頼度の低いプロセッサであるということ


二つ目は、脳が「古い脳に新しい脳をかぶせる」という非効率な作り方をされている、ということ


三つ目は、ニューロンが大量にあるために、ニューロンどうしをどのように接続するかを、遺伝子であらかじめ逐一決めておくことが不可能になったということ


■進化上の制約から


脳はゼロから設計し直すことはできない


性能の悪いニューロンを使って高機能の脳を作ろうとすれば、膨大な数を複雑に相互接続するしかない


結果的に、10000億のニューロン、500兆のシナプスという脳ができあがった


ニューロンのネットワークはあまりにも複雑過ぎ、ニューロンどうしの接続をどうするかを逐一遺伝子で指示するなどということは不可能


そこで経験を基に「使うものを残し、使わないものは取り除く」という方法で巨大なネットワークを構築していく


この作業には、相当の量の感覚情報が必要になるので、それを取り入れるのにどうしても非常に長い時間を要する


誕生後、脳が大人になるまでに時間がかかるのはそのため


他の動物では考えられないほど、長い間、子供でいなくてはならないということ


■男性


視床下部のINAH3


女性の2~3倍


テストステロンの受容体の密度が異常に高い


数学的推論になると、男性の方に部がある


■女性


脳梁と前交連


いずれの組織も軸索の束(白質)で、左脳から右脳へ、または右脳から左脳へ情報を運ぶ役目


「言語流暢性」をテストすると、男性より女性の方が総じて結果が良い


社会的知性(人間関係に必要な知性)、他人への共感、他人との協調といった能力でも、
女性は男性よりも全体として優れている


■レム睡眠


レム睡眠中には、身体は一切動かない


脳波を見ると、覚醒時に似ているのに、眠っている当人の身体は完全に弛緩して動かない


■レム睡眠に費やす時間の割合


レム睡眠に費やす時間の割合は、誕生時には50パーセントにもなるが、壮年期には25パーセントに低下し、高齢になると15パーセントにまで低下する


他のほ乳類と比較してみると、人間の睡眠パターンはちょうど平均的


両極に来るのが、レム睡眠が全体の60パーセントを占めるカモノハシ、そしてレム睡眠が全体のわずか2パーセントにとどまるバンドウイルカ


は虫類や両生類にはレム睡眠は見られない


■「非宣言的記憶」


レム睡眠を奪うことで定着が阻害されるのが、記憶の中でも、ルールや技能、何らかの手順、無意識の連想などに関するもの


つまり、「非宣言的記憶」


一方、事実や出来事についての記憶「宣言的記憶」の定着は、レム睡眠を奪っても阻害されない


■抗鬱薬


セロトニンのレベルを上げることで、レム睡眠を阻害してしまう


■夢日記


夢日記に記録される夢の約70パーセントが、恐怖や不安を伴い、攻撃的な要素を含んだもの


特に多いのが「追いかけられる夢」


負の感情を伴う夢には、そうでない夢より目を覚まさせる力が大きい


■夢はオフラインの記憶処理


脳は、戦時の軍事工場のように「不眠不休」で記憶の統合、定着の仕事をする


ジョナサン・ウィルソン


■記憶の統合、定着


記憶の統合、定着を促すために、恐怖や不安、敵意の感情を無理矢理に引き起こしている


■脳の「物語作り」は止められない


左脳が話をでっちあげる


左脳の物語作成機能は常にオンになっており、わずかな知覚、記憶の断片をつなぎあわせて物語を作ろうとする。その物語は夢の中などで、時に超自然的なものになる。これが宗教的観念を生む。


■我々の脳


完璧なものでも、非のうちどころのないものでもないし、ゼロから十分な吟味の上で作られたものでもない


実際には、すべてが間に合わせ、その場しのぎ、寄せ集め、次善の策の産物


進化の道筋が曲がりくねっていたからこそ、その場しのぎの対策の寄せ集めだったからこそ、我々は今のような姿になったと考えるべき








1章 ● 脳 の 設 計 は 欠陥 だ ら け ?  
・・脳の作りは、案外いい加減・・スイッチが入ったままの小脳・・脳はアイスクリームコーンのようなもの・・ほか


2章 ● 非 効 率 な 旧 式 の 部 品 で 作 ら れ た 脳
・・燃費が悪い脳・・軸索は水漏れする庭のホースのよう・・脳はサイコロを振る・・ほか


3章 ● 脳 を 創 る
・・遺伝子ではできないこと・・発達中の脳は戦場のようなもの・・環境の豊かさはビタミンに似ている・・ほか 


4章 ● 感 覚 と 感 情  
・・脳はなぜ「物語」を作るのか?・・P細胞とWhat経路、M細胞とWhere経路・・情報の隙間を埋める脳・・ほか


5章 ● 記 憶 と 学 習 
・・記憶の想起はネット検索に似ている・・記憶のエラーが起こる理由
・・長期記憶の作られ方・・「記憶」は、進化の偶然の産物に過ぎない・・ほか
 
6章 ● 愛 と セ ッ ク ス   
・・脳が決めた性の特徴・・脳の性差とはなにか?・・歯磨きで起こるオーガズム・・ほか
 
7章 ● 睡 眠 と 夢 
・・睡眠はなぜ必要なのか?・・レム睡眠とノンレム睡眠が交互に行われる理由・・なぜ夢を見るのか?・・怖い夢が記憶の統合を促す・・ほか


8章 ● 脳 と 宗 教 
・・宗教が存在する理由・・脳の「物語作り」は止められない・・ほか
 
9章 ● 脳 に 知 的 な 設 計 者 は い な い  
・・インテリジェント・デザイン論の根本的な誤り・・まったく逆の真実


【本日の紹介書籍】

つぎはぎだらけの脳と心―脳の進化は、いかに愛、記憶、夢、神をもたらしたのか?
デイビッド・J. リンデン
インターシフト
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おすすめ度の平均: 4.0
4 分かりやい
3 人間らしさ=いい加減な脳の進化の結果?
4 屋上屋を重ねた脳
4 インテリジェント・デザイン論に対する脳神経学者の反論
3 他に類を見ない・・

【関連書籍】
「脳はあり合わせの材料から生まれた」早川書房

脳はあり合わせの材料から生まれた―それでもヒトの「アタマ」がうまく機能するわけ
ゲアリー マーカス
早川書房
売り上げランキング: 191940
おすすめ度の平均: 4.5
4 脳の基本設計
5 極めてわかりやすい進化脳科学の入門書
5 自称「トリビア・マニア」の進化心理学
4 解決策もまた「あり合わせ」
5 応えを求めていた問いに言葉をあたえ、元気をくれる


【関連エントリー】
■書評■
【書評】脳は後づけ?「子供の脳は「肌」にある」山口創
http://ameblo.jp/satokumi1718/entry-10552880631.html



共感は痛み回路の転用「『単純な脳、複雑な「私」』」池谷裕二
http://ameblo.jp/satokumi1718/entry-10267693656.html



【編集後記】
最近「価値を発揮しなければいけない」というとらわれから、脱出したいと思う日々を送っています。

ブログの読者を1000人集まってくれて、ツイッターで1万人の人にフォローしてもらい、ツイッターでも2500人の友達登録と、800人のファンページを持っていても、それが「価値証明」のためが原動力?みたいに考えるとむなしいですよね。

集まってきてくれた人達のために何が出来るのか?

さっくんももちゃんの「パパ見て~」という素直な気持ちだけで行動できる人間になりたい多読書評ブロガーの石井でした。

本日も多読書評ブログ「行動読書」を最後までお読み頂きありがとうございました。




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