先月、初めて、フランス語の本を堪能しながら完読することが出来たという話を書かせて頂きました。実にフランス語の本5冊目にして、やっと読めたー、という実感。

 

これで満足せず、フランス語読書は続けなくては意味がない。間に2冊の日本語の本を挟みましたが、今月また別のフランス語の小説にも手を出して、無事に先日読み終わりました。今回もちゃんと内容を楽しみながら読めました!フランス語読解力がついてきたかな?フランス語は会話ではほぼ使ってませんが、本読んでいれば少しはキープ出来るだろうか。

 

今回読んだのはこちら。アメリー・ノートンのStupeur et tremblements (邦題 畏れ慄いて)

 

 
日本に住んでいるフランス人や、日本に興味あるフランス人の中で、読んでいる方が結構いるようです。フランスだけではなくドイツでも人気のよう。
 
幼少期を日本で過ごした著者、ベルギー人のアメリー・ノートンが、成人して日本にもどって来て、派遣社員として典型的日本企業で働いた時の、畏れ慄いた体験をもとにした小説です。
 
アメリー・ノートンの小説は私にとって2冊目。1冊目は日本人大学生との恋愛を書いた話。

フランス語で読書する際、あまり分からない単語にとらわれないで、文脈でなんとなく理解する方法で読んでいるのですが(だから結果的に読み終えてもあまり良くわからなかったのが初期の数冊。笑)、彼女の本は結構比喩が多くて、意味がわからないとすぐ迷子になっちゃう。だから先日実家から持ってきた仏日辞書をわきに置いて読みました。久々に紙の辞書を引きました。スマホのGoogle翻訳だと、本を中断してスマホ見ちゃったりして気が散るから。昔ながらの辞書って、前後にある単語も目に入ったり、改めて良いものですね。
 
で、内容の話。ネタバレ含みます。
20代前半のアメリが、商社(多分)で契約社員として働き始めます。1990年の話。どんな契約で外国人の彼女が何を期待されて入社したのかわからないのですが、当時の女性社員がそうだったように、お茶くみからスタートします。私が社会人になった約20年前には、もう女性社員のお茶くみなんて仕事はありませんでしたが、当時40代だった先輩たちから、彼女たちが入社した時は、まず誰のマグカップがどれか覚えるところから始まり、コーヒーに入れる砂糖の数とか、そういうのを把握していた、なんて話も聞いたことがあります。アメリさんが経験したのもそんな世界。
 
ヨーロッパから来た日本語、英語、フランス語堪能な彼女が日本の会社でお茶くみだなんて、さぞカルチャーショックだったろうと思いつつも、それなりに楽しんでタスクをこなす彼女。しかしそのうちどんどんどんどん辛い状況に追い込まれて最後辞めちゃうまでのお話。
 
日本語版の本のレビューを読むと、理不尽な日本企業で厳しい状況にいながらもユーモアたっぷりの切り返しと嫌味で、コメディタッチな本。笑いながら読んだ、というレビューもあれば、日本企業への偏見ばかりで酷い内容、というものも中にはあり。フランス語や英語版のレビューを読むと、日本を知らない人であれば、ものすごく誇張された内容と思うかもしれないが、日本企業で働いたことがあるならば、どれも起こり得ることとして理解できる。日本には外国人が知らずにやってしまう間違いがたくさん潜んでいて、その間違いをしたら厳しく叱責され許されることはない様をよく表現している小説、だなんてものもありました。また、日本人の典型的passive aggresiveがよくわかる、とも。Passive aggresiveって、会社の日本人のおじさんにたまに見ますね。最近よく聞くキーワード。
 
最初はアメリよりの視点で、彼女に同情しながら、ヨーロッパ人の彼女の目に映る日本企業の姿を面白く思いながら読み始めたものの、途中から、日本企業側の、特に彼女に酷い仕打ちを繰り返す29歳の女性社員、マドモアゼル森の気持ちに同調している自分に気が付いてしまいました。マドモアゼル森こと森吹雪。
 
吹雪に共感してしまうのは認めざる自分の姿かもしれませんが、結局私も日本企業で20年間も仕事をしている典型的女性社員、お局社員なのかもしれない。
 
アメリ本人は語学力を買われて、そういう仕事をするのだと思って入社したのかもしれませんが、読む限り、多分ちょっと違う。部署のサポートをする普通の派遣社員として入っているように見えます。そうなった場合、彼女の行動やコンピテンシーなど、読んでるうちに、仕事出来ない人疑惑がどうしても沸いてくる。

何度も仕事をやり直しさせられるシーンがあり、アメリの視点で語ると無意味で理不尽なんだけど、コピー取る仕事で、何度も、中心がずれてるからやり直して、って言われるんです。多分、仕事が雑で本当に中心がずれていたんじゃないかな。。。。。

他にも、自分は経理の仕事なんて出来ないのに経理仕事をやらされて、うまくできなくて、ってエピソードもあるけど、経理の仕事ってほどのことじゃないんです。取引先との領収書を会社とジャンルごとに整理するだけ仕事があり、彼女はドイツの企業名の最後にあるGmbH(有限責任会社の意味。英企業のLtd.や仏企業のSA.みたい意味)を全て同じ会社だと勘違いして一箇所にまとめてしまい、その後工程の社員に大迷惑をかけるのですが、その時に、ドイツ人ってセンス無い。有限会社って意味でGmbHなんて普通つける?ってジョークを言うんです。もー、彼女の上司なら怒りが湧いてきちゃいますよ。誰の尻拭い残業してるんだーーーって。

本の中で、アメリに仕事上のチャンスが訪れることもあるのですが、それは結局問題になり潰されてしまう。それはコピー機のところで立ち話した別部署の課長から、ベルギー人なの?ベルギー関連の仕事ちょっと手伝って、と言われて彼女が自分のライン上司たちに何も言わずに手伝うエピソード。それも残業して。それだって、ライン上司の立場だったら、勝手にそんなことされたらやっぱり困りますよね。

吹雪のアメリに対する仕打ちはどんどんエスカレートして行き、最後は行き過ぎの発言ばかり。パワハラだし、人種差別となる発言もある。また会社の人たちも、彼女がいる場で欧米人の体臭をジョークにするシーンもあり、そういう日本人の国際社会における無知さや鈍感さは痛く映る。

それでも吹雪に共感してしまう自分は、きっと最近の私の実体験も影響してるんだろうな、って思います。超絶出来ないエジプト人部下との日々が。。。

エジプト人部下、間違いや仕事のクオリティの低さを指摘しても指摘しても直らない。しまいにはどこが悪いんだ、と逆ギレも何度か。最高会議体の社長提案に持っていく資料で、内容作成にも最初入ってもらってたけど役に立たず、この会議体の指定フォントに資料をなおすことをお願いしたら、できましたーって言うたび、いや、できてないやんけーーーってやり取りを4回繰り返したことがあり、アメリのコピーのやり直しシーンで思い出してしまいました。私だってフォントなんてくだらないって思うけど、うちの会社で1番トップレベルの会議でそのフォントで資料作れって言われてるんだもん。内容作りの役に立たないなら、それくらいやってよ、って思うでしょー。

こないだは、そんな部下と仕事のクオリティで口論になり、私もさすがにパワハラだと思うくらいの発言を吐きました。録音されてたりしたら、私アウトですよ。

小説の中で吹雪がアメリに、あなたの国って、、、、あなたみたい人ばかりなの?って聞くんです。いやーー、、、聞きたくなるよね。私もね、何度も、エジプト人がピラミッド作ったなんて、信じられない、って言いたくなる(あ、もっと酷い。これNGなやつでしょ?私が例えば将来政治家になり、このブログ発見されたら、差別発言でアウトよね。まー政治家にならないけど。笑)

そんなんで、私はどんなレビューでも書かれていなような敵の視点にも同調して本を楽しんだのでした。

本の中でアメリは仕事を干され、最後はトイレ掃除の仕事が与えられるわけですが、そんなことはさすがにフィクションだと思うのですけどね

それでもアメリは、吹雪のことを美しいと最初から最後まで形容しています。

そしてこんな小説出しちゃってベストセラーになって、吹雪の酷い仕打ちに対する、最大の仕返しになったのではないでしょうか。

小説の終わりはアメリが小説家デビューするところです。そして、吹雪から手紙が来るのです。アメリさん、おめでとう、と。

日本企業に染まったお局様な私もいつか、エジプト人から思いも寄らない方法で、仕返しされるかなー?笑