昨年、ロシア語講座の関係で

この本を訳されたサブリナ・エレオノーラさんと

お会いする機会があり、

そんなご縁もあって読んでみました。

 

バレエ音楽「ロミオとジュリエット」や「シンデレラ」、

その他「ピーターと狼」などの作曲家として有名な

プロコフィエフの書いた短編小説集です。

 

少し前ですが、

この短編集のことや

プロコフィエフがアメリカに渡る途中、

日本に滞在した話など、

数社の新聞にも載っていましたので、

それでご覧になった方もいるかと思います。

 

 

とにかく奇想天外、摩訶不思議なお話流れ星

 

プロコフィエフの音楽の世界、そのまま。

カラフルでリズミカルで、

どこへ飛んでいくかわからない不安定さ。

時代の流行もあったと思いますが、かなりシュールです。

 

 

私のお気に入りは、「彷徨える塔」。

エッフェル塔が歩き出すお話です。

 

塔が歩くと聞いて、

ゴジラが街を破壊するような光景を思い浮かべたのですが…

 

エッフェル塔は

建物をつぶさないよう注意深く進みながら、最短の進路で街を抜けた

そうです。

ただ歩きなれていなかったためうっかり壊してしまったと。

ずんずん歩いて、

マルセーユで地中海に阻まれると(海を渡ろうと逡巡する姿にキュンとします恋の矢)、

山へ向かい国境を越えて…

最後は突然ビューーーンロケットとパリに戻ってきます。

 

なんとも愛すべきエッフェル塔。

 

 

それから、「紫外線の気まぐれ」。

紫外線(姓)時間(名)」と同じく「赤外線空間」の姉妹が

仕事をサボって一休み。

すると時間と空間が入り乱れて…

SFファンタジー映画にもなりそうなストーリー。

片言外国語での会話の場面が秀逸です。

 

もう一つ「罪深い情熱」。

「B♭」の音に熱狂する男たち(笑)

職業、貴賤にかかわらずの、オタクっぷりに笑えます。

好きになったらこういう情熱がなくっちゃ!

 

 

突飛すぎて?な話もありますし(笑)

出だしのみで未完のモノも収められていますが

いろいろなタイプの小説を書こうとしていたのがわかります。

 

また、一緒に収録されている

日本に滞在した時の日記も興味深い。。。

 

演奏会をしていくらもらったとか¥

 

「彷徨える塔」を、私の生まれ育った町である

東京・大森で書いたのも、なんだか嬉しい。

あの話のどこかに大森の影響があるでしょうか?(笑)

 

「もう五日間も何ひとつ創作活動をしていない」

という記述もあります。

きっとプロコフィエフにとっては

作曲も、小説書きも、方法が違うだけで

思いついたことを練って整えて表現することに

変わりなかったのでしょう。

 

また、演奏会にて

「日本人の気をひくのは上っ面の面白さ」

「礼儀正しく聞いていた。拍手は少なく、例外は技巧的な曲だけ。」

そうだっただろうな、と容易に想像できますあせる

耳が痛いですね。。。