算学啓蒙
朱世傑 編
大徳3年7月 原序/万治元年 和刻跋
刊 1冊
編者の朱正傑は元の人。宋末・元初の時代に発展した算木の計算術、「天元術」を用いた算書として知られている。
そろばんの普及により、この天元術は中国本土から忘却されてしまうが、テクストとしての『算学啓蒙』(1299年)は朝鮮半島に保存されて近世に至る。近世日本にもこの朝鮮版本の情報が伝来しており、合計3回ほど和刻本が刊行されている。
本資料はその中でも一番目に翻刻された万治元年本(1658年)である。(二度目の翻刻は星野実宣によって、三度目の翻刻は建部賢弘によってなされている。)この『算学啓蒙』によって近世日本の和算家たちは天元術を会得し、その後の飛躍的な発展の契機を得ることになる。
本書冒頭に「明理堂」印あり。これは金沢藩の和算家、中野庄兵衛(1756-1832)の蔵書印。