【概要】
育児を頑張っている皆さん!この記事では、乳児が「裸足」で過ごすことと、「発達や健康」にどのような関係があるのかを、海外・国内の研究論文を参考に考えていきます。赤ちゃんが裸足でヨチヨチ動き回る姿って、とっても可愛らしいですよね。でも実際に「裸足でいるとどんなメリットがあるの?」と不安になる方もいるかもしれません。この記事では、足の発達やバランス感覚、体幹への影響など、さまざまな側面から裸足生活の利点や注意点を掘り下げてみました。今回調べたところ、直接的に「乳児」の裸足習慣を対象とした研究は多くありませんでしたが、幼児から学童期にかけての裸足生活が足の発達にプラスの影響をもたらす可能性を示すデータは少なくありません。ぜひ日々の子育てのヒントにしてみてくださいね!
■■■乳児の裸足と成長の関係■■■
まずは前提として、「赤ちゃんに靴は必要?」という疑問について考えてみましょう。実はアメリカ小児科学会(AAP)では、まだ歩き始めていない子どもの場合、靴を履かせる必然性はそこまで高くないとするガイドラインを公開しています。AAPによると、歩く準備を始めるまでは、足に負担の少ない柔らかな靴下程度で十分という見解が示されています。靴は基本的に「外での歩行をサポートし、足を守るもの」という位置づけだからです。
出典:
American Academy of Pediatrics. (2013). Choosing the Right Shoes for Children. HealthyChildren.org.
https://www.healthychildren.org/english/safety-prevention/at-play/pages/choosing-the-right-shoes-for-children.aspx
つまり、室内で過ごす分には、無理に靴下や靴を履かせなくてもOK、むしろ裸足でいることが足裏の感覚発達に役立つ場合があるというスタンスです。
■■■裸足のメリット:感覚刺激とバランス感覚■■■
裸足の大きなメリットとして挙げられるのが、足裏からの「感覚刺激」と「バランス感覚」の向上です。赤ちゃんは足の裏で床や地面の感触を感じ取ることで、脳に多くの情報を送っています。特に、硬い床や柔らかいカーペット、畳など、さまざまな素材に触れることで触覚や固有感覚が刺激され、体幹の発達やバランス感覚の形成を促すと考えられているのです。
■体幹とバランス
赤ちゃんが寝返りやずりばいを始める頃は、足の裏だけでなく全身が床と密着している状態が多いですよね。その時期にいろいろな素材や微妙な高低差、温度差を足裏で感じ取ることで、
姿勢制御に必要な筋肉を細かく調整する力が養われるという指摘もあります。
■■■海外研究:裸足で育つと足の形態にどんな違いが?■■■
「じゃあ、実際に裸足が足の発達にいいって証明されているの?」と思う方もいるでしょう。子どもが裸足で過ごした場合と靴を履いて過ごした場合の足の形態については、いくつかの研究が報告されています。なかでも注目されるのが、ドイツと南アフリカの研究チームが行った比較調査です。
●Hollanderらの研究(2017年)
ドイツと南アフリカの子ども1,015人(6〜18歳)を対象に、足の形態を3Dスキャンなどで計測した研究がありました。この研究では、主に農村部で裸足生活が多い南アフリカの子どもたちと、都市部で日常的に靴を履いているドイツの子どもたちを比較し、足の幅やアーチの高さなどを調査しています。
その結果、
・裸足で過ごす時間が長い子どもは、足幅がやや広い傾向
・足裏アーチの形成もわずかに違いが見られ、裸足群の方が足の柔軟性が高い
という興味深い傾向が指摘されました。
出典:
Hollander, K., De Villiers, J. E., Sehner, S., Wegscheider, K., Braumann, K. M., Venter, R., & Zech, A. (2017). Growing-up (habitually) barefoot influences the development of foot and arch morphology in children and adolescents. Scientific Reports, 7, 8079.
https://doi.org/10.1038/s41598-017-07868-4
ただし、これは6歳以上の子どもを対象とした研究で、乳児期のデータではありません。とはいえ、足裏への刺激を受けやすいライフスタイルが、その後の足の形態や機能に影響を及ぼす可能性を示唆する重要な参考材料と言えるでしょう。
■■■日本国内の知見:子どもの足育について■■■
日本国内では、乳幼児期に靴や靴下を早期から使うべきかどうかについて、医学界や育児専門家の間でもさまざまな意見があります。厚生労働省の「乳幼児健康診査マニュアル(改訂版)」(下記URL参照)でも、足の発達に関して直接的に「裸足が絶対にいい」という言及は見当たりませんが、歩行が始まる前の段階では過度に靴を履かせる必要はないという見解が示唆されています。
出典:
厚生労働省「乳幼児健康診査マニュアル(改訂版)」
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenko_iryo_shisaku/dl/nyuyoji_guide.pdf
■足育(あしいく)という考え方
近年、日本の保育園や幼稚園で「足育」という言葉が使われるようになり、子どもの足を締め付けない履物の選び方や、できるだけ裸足で走り回れる環境作りが推奨されることも増えてきました。幼児期の段階で足裏感覚をしっかり育むと、
将来、偏平足や外反母趾などの足トラブルを防ぎやすい可能性があると考えられています。これも乳児期からの足裏刺激が大切、という認識につながっているわけですね。
■■■裸足のメリット:体温調節や感覚発達にも■■■
●体温調節の学び
赤ちゃんは大人に比べて体温調節機能が未熟です。ただし、足裏からの熱放散や床面温度の違いを感じることで、身体が適切に反応するきっかけにもなり得ます。もちろん寒すぎる環境では冷えすぎに注意が必要ですが、室温が適切な範囲ならば足裏で温度を感じる体験は体温調節の学習に役立つ可能性があります。
●感覚統合の刺激
乳児期は五感が急速に発達する時期でもあり、足裏で触れる感覚は意外と見落とされがち。でも、
この足裏の刺激が赤ちゃんの脳に「ここに床がある」「足をこう動かす」といった情報を送ることで、スムーズな運動発達を支えているという見方もあります。
■■■裸足のデメリットや注意点■■■
いいことばかりに思える裸足育児ですが、もちろんデメリットや注意点もあります。
●外傷やケガ
室内であっても、床に小さなオモチャや尖った物が落ちていると、踏んで足裏を傷つけてしまうことがあります。またフローリングが滑りやすい場合は転倒のリスクもあるので、掃除や安全対策が重要です。
●寒さ・冷え
日本の冬は地域によってはかなり寒いので、赤ちゃんが冷えを感じると体調を崩す可能性も否定できません。床暖房や暖房器具を活用する、柔らかいスリッパやソックスで冷えすぎないように調整するといった工夫が必要です。
●公共の場では衛生面の問題
公園や公共施設などで裸足になる場合、衛生面や怪我のリスクを十分考慮しないといけません。ガラスの破片や動物の排泄物などが落ちている可能性がありますので、場所をよく選んでから裸足で遊ばせると安心です。
■■■裸足が運動能力に与える影響■■■
裸足の生活が長いと、運動能力に差は出るのでしょうか。前述のHollanderらの研究(2017年)では、足の形態だけでなく、バランス試験やジャンプ力、ランニングフォームなどについても一部データが提示されています。結果として、
・裸足で育った子どもは足裏のプロプリオセンサー(固有感覚受容器)が発達しやすい
・バランス課題や足の巧緻性が要求される動きで有利になる可能性がある
という示唆がありました。ただし、これは学童期以降の比較で、乳児を直接観察したデータではない点を留意してください。
結論としては、裸足が足裏感覚を豊かにしてバランスをとりやすくする可能性はあるものの、それだけで全体の運動能力が劇的に向上するわけではなく、あくまでも複数要因の一つとして考えられているようです。
■■■乳児にとっての適切な「裸足」の範囲■■■
気になるのは、「どこまで裸足で過ごさせても大丈夫?」という具体的なところですよね。基本的には、以下のようなポイントを押さえれば、家の中で裸足を楽しむことは十分に検討できると思います。
●室温や湿度、床材をチェックする
赤ちゃんが快適に過ごせるように、部屋の気温は20〜24度前後(湿度50〜60%)を目安にすると良いとされています。床材がフローリングの場合は靴下を履かせた方が安全という意見もありますが、滑り止めがついていない場合、むしろ裸足の方が踏ん張りがきくケースもあります。
●歩き始めの頃は特に怪我対策を念入りに
赤ちゃんがハイハイからつかまり立ち、伝い歩きへと移行する時期(だいたい9か月〜1歳半くらい)は、踏ん張りとバランスがカギになるので裸足がプラスに働くかもしれません。その反面、転び方も豪快になるので、家具の角にクッションを貼るなど室内環境の安全対策をしっかりしましょう。
●外出先での裸足は慎重に
海や芝生の公園など、柔らかな地面のある場所なら一時的に裸足を体験させるのも面白いかもしれません。ただし、砂や草の下に危険物が隠れている可能性もあるので、パパがしっかり先にチェックしてから遊ばせると安心です。
■■■サポート:楽しく、安全に「裸足」を取り入れる■■■
●足裏のマッサージや遊び
赤ちゃんの足裏を軽くマッサージしてあげたり、「くすぐったいね〜」と声かけしながら足の指を刺激してあげると、足の存在感を赤ちゃん自身が感じ取りやすくなります。機嫌がいいときは、足の裏を軽く触れ合う「足じゃんけん」みたいなスキンシップを楽しむのもおすすめですよ。
●床の掃除・片づけをこまめに
これはなかなか大変な作業ですが、裸足で過ごすということは何か踏んづけたり、口に入れてしまう恐れがあるものが落ちていると危険です。パパがこまめに掃除して落ちている小物を片づけるだけでも、裸足生活が格段に安全になります。
●家族みんなで裸足タイム
赤ちゃんだけでなくパパやママも一緒に裸足になってみると、赤ちゃんが安心して真似るかもしれません。もちろん大人にも足裏の感覚を養うメリットがありますが、足のケガには十分注意してくださいね。
■■■まとめ■■■
ここまで、乳児の「裸足」と「発達や健康」の関係について、主に海外の研究や日本の育児指針などを参考にしながら考えてみました。大きなポイントを振り返ると、次のようにまとめられます。
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母子保健的には、歩き始める前の赤ちゃんに無理に靴を履かせる必要はない
AAPや厚生労働省の資料でも、屋内であれば靴を使わなくても問題はないとされています。 -
裸足生活が長い子どもは足裏の感覚が豊かになり、足の形態やバランス感覚にポジティブな影響がある可能性がある
Hollanderら(2017)の研究によると、6歳以上で裸足生活が多い子の足は幅や柔軟性に違いがあると指摘されています。ただし、乳児の段階でのデータは限られています。 -
実際に裸足にする場合は、安全対策と温度管理が大前提
室内でも床に落ちている小物でケガをしたり、フローリングで滑ったりするリスクがあります。外での裸足遊びはさらに注意が必要です。 -
裸足だけがすべてではないが、足裏刺激は発達において見逃せない要素
単に靴を脱がせるだけでなく、足裏をマッサージしたり、いろいろな素材の上を踏ませたりといった遊びを取り入れると、より多面的な刺激が得られます。
最終的には「家の環境や赤ちゃんの様子に合わせて、裸足を上手に取り入れる」という姿勢が大切だと僕は思います。外は靴で保護しつつ、家の中では裸足で自由に動き回らせてあげるのも一つの方法ですよね。僕もわが子がハイハイから伝い歩きに移るころ、よく裸足で床をペタペタ歩いている姿を見守っていましたが、指先までしっかり使っている感じがして、すごく成長を実感できました。
何より、赤ちゃん本人が嫌がらず、そして安全に動き回れる環境を作ることこそが一番大事。みなさんもぜひ、無理のない範囲で「裸足育児」を取り入れてみてください。パパが一生懸命サポートすれば、赤ちゃんにとっても楽しい体験になるはずです。これからも一緒に、わが子の発達をあたたかく見守っていきましょう!