得意な料理は何か、と聞かれることがたまにある。いつも、ない、と答える。本当にないから。
  たぶん、そこまで料理に対する情熱みたいなのがないのだと思う。料理は仕事。だからたとえば、〆の雑炊に対するこだわりもない。客に好みを聞いて、サラサラがいいと言われればサラサラを作ればいいと思っている。
   これは決して皮肉ではなく、この料理は絶対にこう、と曲げずにいられる人はすごい。自分なんかとは料理に対する熱意が違う。ラーメン屋でもそうだが、ブレずに同じものを作り続けていれば、むこうからそれを求めて客は来る。
   料理人という仕事は自分に向いてないんじゃないかとよく思う。でも、もう今さら、他に何もできないから、何かこう、一回1万円で、昼か夜か、食材の原価は客持ちで、食に関する要望をできるだけかなえます、的な仕事、成立しないかな。