前回の記事に続きまして、アブダビのサディヤット島にできた、ルーヴル・アブダビのレポートです。
約600の美術品が23のギャラリーに展示されているこの美術館、
従来のように「西洋美術」「東洋美術」「彫刻」「工芸」などとジャンルごとの展示室に分けるのではなく、
歴史を「人類初めての村ができた頃」「王国ができてきた頃」「帝国の時代」「文明の出会い」
「権威の象徴としてではなく、個人で美術を楽しむようになってきた頃」「グローバルの時代」...とざっくりぶった切って
その時期の様々な地域の、様々な美術品を並べて置いてあるのです。
おかげで飽きがこなくて面白い...!
そして美術館って、本家ルーヴルでもメトロポリタンでも、
何かと「西洋美術が一番エライ」ような気がしてしまうのですが
ここではいろんな文化の美術品が、万遍なく並べられていて、
↓のような中東らしいイスラム美術も(ちなみにこの絵が私の一番のお気に入りです)、
中国や日本からやってきた東洋美術も、
アフリカ大陸や南米のプリミティブな工芸品たちも、同じように扱われています。
よって、ここの展示を一通りみると
文化に優劣はないということが実感できるのです。
公式HPにも、美術館のテーマが「See humanity in a new light」と書かれているのですが
まさにそれだな、と思う。
さて、前の記事に続いて、個人的に面白かったものを紹介していきます。
個人で愉しむ美術、のあたりから、日本のものが増えてきました。
日本はやはり「うち」の文化だからでしょうかね~。
そしてこの屏風、出島にポルトガルの交易船がやってきた場面を描いているのです。
信長が着ていたような、ポルトガル服の人々の姿が面白い
こちらのおじさんたちは、ムガル帝国の王様と息子。
ムガル帝国は、現在のインドを広く支配していたトルコ系イスラム王朝で、
王家はチンギス・ハンの血をひいています。
衣装が本当にいろいろ混ざった感じ、で面白い。
こちらはフランス絵画に描かれた中国の人々。
和洋折衷ならぬ、中洋折衷で、これまた面白いです。
美しいインド絵画に
フルート奏者を描いた、ペルシャのタイル絵。
比べてみると、西洋絵画もまた魅力的に見える気がします。
この絵のナポレオンはやっぱりイケメンですな~
帽子かぶってるから、髪の毛が少ないのわかりませんしねw
バベルの塔の絵、というのも、美術館では初めて見ました~。
ちなみに写真スポットになっていたのはこちら。
日本の鎧はやっぱりおどろおどろしさがありますね...。
こちらは中国・宋の時代の器です。タイムレスな美しさ...
これも、現代でもそのまま使えそうですね。
アラビア語がちょこんと縁に書いてあるのがおしゃれなこのお皿、
ペルシャのものだったかな...記録し忘れていました。
一方イランの絵皿...ちょっと絵が下手じゃない~?w
ヘタなやつシリーズを探すのも、なかなか楽しいですwww
美術品の中には、時々子どもの夏休みの作品みたいなのも
混じっているのではないかと思ってしまいます
ぼってり感がなんだか可愛い、南米の(インカ帝国だったかな...)花瓶。
フクロウの花瓶は、現代にも通じる可愛さですが
これはどんなお花を飾っても、ギャグにしか見えないような...。
さて、近現代の展示室は、下の娘が飽きてしまってあまりじっくり見られなかったのですが...
写真や映像の紹介もされていて、特に中近東を旅行した写真家の作品は、興味深いものでした。
近代の展示室では、トライバルなものへの憧れ、回帰についても紹介されています。
ジャコメッティの彫刻と、コンゴの工芸品とが並べられている、というのも面白いですよね...!
最後はやはり現代アートで締めくくられています。
フィリップ・ラムットというフランスのアーティストによる
マグリットの絵の実写版みたいな作品が、個人的に気になりました。
いかにもアラブ人が好きそうな、キラキラのオブジェは
中国人のアーティストによる作品。
これもバベルの塔をモチーフにしているそうで、多様性とは何かを問いかけているのだそうです。
もうひとつ印象的なのが、サウジアラビアのアーティストによる
『Food for Thought』というお鍋を並べた作品。
砂漠の民たちが、客人をもてなすために持ち歩く大鍋など、
様々な由来の鍋を並べてあるのだそうです。
で、ひととおり展示室を見終わってテラスに出ると...
ここで初めて、ジャン・ヌーヴェルの設計による建物のすばらしさがわかるのです
ドームに空いた穴から光が差し込む様子の、美しいこと...!
もともと光を操るのが得意な建築家みたいなのですが、この空間はすごい...!
周りに広がる海の景色と、静かな海に響く小鳥の声と、
音も光もすべてが計算しつくされた作品の一部...みたいな気がします
そこにいる人々もなんだか作品の一部のように見えてきて
パノラマで撮影したくなりました。
この建築を見るだけで、入館料の60AEDを払う十分な価値があるように思います
そうそう、テラスに出たあとの、展示室とは別の棟内に
子ども美術館もあります。
一般の展示室で紹介されていた内容を、子どもむけに体験展示にした、といった趣きです。
壁に映し出されるお花が可愛かったのですが、
うちの6歳・3歳は、理解力の問題かセンスの問題か、あまり楽しめずでした
はーこ@6歳は、一般展示室のモニター解説のほうが楽しんでいたかな...。
小さな展示品を、拡大して360度から観察できる、よくできた解説パネルです。
出土した場所を地図で表示してくれたり、子どもにもわかりやすくて素晴らしい!
というわけで、ルーヴル・アブダビ、我が家はものすごく楽しめました
また行きたいな~