シャンソンでも唄われたリラ
写真は山田案山子さん提供
ライラックというより、リラのほうが語呂がいい。ライラックでは唄にならない。「リラの花咲く頃」は、シャンソンの人気ナンバーだが、これが宝塚ヴァージョンでは「スミレの花咲く頃」になる。岡本敦郎も「リラの花咲く頃」をうたっているが、これは全くの別物。しかし、これも悪くない曲である。
昔ばなしを少し。
いま住んでいる家を建てたとき、植木屋に40種弱の樹木を頼んで植えた。狭い庭だから、ほとんどはツツジなどの灌木類である。
家内が希望する木も植えたが、大半はわたし好み。父に似た選択で、たいがいは和風の樹木、洋風なのはアメリカハナミズキとライラックぐらいであったろう。
開花期ではない季節の植栽工事だったから、花色をほとんど確かめずに庭ができあがった。
サツキ類などは、色とりどりの花が咲いて嬉しかったが、「こんな花色?」とガッカリしたものもあった。
その代表がライラックである。うかつなことに、「ライラック=紫色」という先入観があって、色指定をしそこなった。咲いたのは白色。
白色のライラックは、西洋では歓迎されない。婚期が遅れるとかで、若い女性へのプレゼントはもっての外だそうである(この辺り、案山子さんのHPに詳しい)。花が散って(女性が逃げて)はおしまいである。
そんな縁起かつぎに、興味はない。白花も、それなりにきれいである。しかし「この辺りに紫の花」とイメージして植えたから、庭のバランスが崩れた気がして、ちょっと悔しかった。
数年後、日当たりの関係もあって、ライラックを移植しようと強剪定を行った。ところが失敗。詰め過ぎて、接ぎ木の元であるイボタの木だけしか残らぬ羽目になった。愛情が薄れると、樹木は枯れるという。我が家のライラックは枯れずに、剪定鋏の露と消えてしまった。
札幌の市花はライラックだという。6月の句会で詠ってみた。
リラ冷えと友から便り音は雨 (ひとみ)
この「音は雨」は、不評であった。「外は雨」とかのほうがいい、というのが大勢。「外は雨」は、平凡過ぎると思って、取らなかった下五である。
ついでだから、この句会に出した他の句も披露しておこう。
髪に指からめる花魁(おいらん)油でり
七夕の飾りアマビエにぎはれり (ひとみ)
近所の調剤薬局には、アマビエの絵が、そこらじゅうに貼ってあった。
いつもながら、山田案山子さんにサンクス。