蓮(ハス、ハチス)
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写真は「ほんのり」さん提供

 高校の音楽の授業で、シューマン作曲の『蓮(はちす)の花』を歌った。

 いくたびも練習させられたので、いまだに全歌詞を覚えている。近藤朔風の訳詩は以下の通り。

 日盛(ひざか)りしぼめる 蓮(はちす)の花
 夜(よ)のかげ夢見つ うなだれて待てり
 月待ちわびつや 優しき光に
 夢呼びさまして その面(おも)照らしぬ
 み空見上げて 蓮(はちす)は開きつ
 香りぬわななきぬ 切なき思いに
 切なき思いに

 朔風は、『ローレライ』の「なじかは知らねど心侘びて」、シューベルトの「泉に沿いて茂る菩提樹」(『菩提樹』)、「わらべは見たり野中のばら」(ゲーテの『野ばら』)などでも馴染みだったから、「昔の翻訳はいいな」と思いつつ歌った。

 蓮の花を初めて見たのは、たぶん実家から徒歩五分ほどの池であったろう。千坪余りの池で、カラス貝、アメリカザリガニ、テナガエビなどが獲れ、ホタルも飛ぶ池である(少年時代には埋め立てられ、すでに住宅地になって久しい)。

 しかし、「美しい」という感激が残っているのは、この池の記憶(幼少期)ではなく、十代半ば過ぎてから見た鎌倉近代美術館の池の蓮だった。展覧中の鳥海青児の絵画より蓮の花のほうが衝撃的で、その慮外な印象が鮮やかに記憶に残っているからかもしれない。

 蓮の花浄土で会えると合掌し
 泥水を呑んで育つや蓮の花  (ひとみ)

 霞ケ浦近辺、土浦付近ではハスが地産品として著名で、あちこちに点在する蓮田の花は見事である。ドライブの目的は他にあっても、つい車から降りて散策してしまう。熱中症の危険を冒して眺めまわる価値あり、と。

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