私の敬愛して止まない小説家・吉村昭の『戦艦武蔵』を思い出す。
言わずと知れた日本帝国海軍の超巨大戦艦。必勝の祈りを背負い、世界最高峰の技術を結集して造られた。「武蔵」と名付けられたその巨体は、昭和19年の秋、米軍の爆撃を受け海に沈むことになる。
その巨大戦艦に「気象班員」として乗り組んでおられた方が御存命でいらした。中学校で生徒らに自らの体験を伝えられたという。自分らとさほど年の変わらぬ少年が召集され戦闘に従事していたという事実を、中学生たちの柔らかな心と頭はどう受け止めただろうか。爆撃を受け海に放り出され九死に一生を得て今、自らの稀有な体験を、歴史の事実を自分たちに伝えたいと考えてくれたことに、中学生たちは何を感じ考えただろうか。
今を生きる大人として、自らがせねばならないことを考える。そして行動してゆこう。