佐藤薫のミステリないと

ようこそ、いらっしゃい。ここには、ちょいとミステリアスなお話のカケラが散らばってます。まとまってたり、てんでバラバラだったり、シリキレてたり、まあ、いわゆる雑記物ですんで、悪しからず。気の向くままに、肩のチカラを抜きながら軽~く。さあて、さてさて。はじまり、はじまり。


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『隣人は三度チャイムを鳴らす』 

  めざめのよさが自慢の僕は、ふだんから目覚ましなどは使わない。

  どういうわけか、決まって午前六時に、すうっと眼がさめる。束の間、呼吸を整えると、すくっと身を起こす。そのままパジャマ姿で新聞を取りに行くのが習慣になっている。

  その朝も、決まった時間にめざめ、4階の部屋から地上階のささやかなエントランスロビーにある集合ポストに向かった。あくびもしなければ、朝の光が眩しく感じたこともない。

  エレベータの扉が開くと、見知らぬ女性が、はっとした表情を見せて、ぎこちない会釈をして僕の横を通り過ぎていった。僕が乗り込むのを、じっと見つめているように感じた。横目でその女性を窺うと、もう一度、軽く頭を下げたように映った。僕は、そのまま扉を閉じた。

(だれだろう・・・僕を知っているのだろうか)

  見覚えは、なかった。

何気なく部屋にもどると、僕は朝刊を広げ、事件欄を眺めた。

  今日で3日、いや4日目になる。

  あの夜、あの公園で偶然目撃してしまった一件は、とくに事件にもならずに、あれで事もなく済んだということなのだろう。あれは、ただの男女の痴話喧嘩だったのだ。関わりあうのも正直、面倒だった。

  しかし・・・。この数日間、気になっていた。

  あの夜、公園の端の外灯まで来たとき、もつれ合う男女の影の、どちらか一人が崩れるのを見ていたのだった。そして、どちらか一人が走り去る足音も聴こえていた。これは、ひょとしたら、事件なのかもしれないと想像を巡らせながら、僕は、そのまま家路についたのだった。

  翌朝、僕は、健康志向のランナーを装って、ジョギングに出た。早朝六時過ぎの公園には、すでに散歩の老人が数人、ベンチに腰掛けている。昨晩の男女がいた場所を眺めてみたが、とくにあらそった痕は見られなかった。公園の周辺をゆっくり走ってみたが、事件らしきものを連想させるものは見つからなかった。

  何事もなかったのに、なぜこうも気にかかるのだろう。

  

  公園

  その夜、一度目のチャイムが鳴った。