GCUに移動してすぐのそうちゃんの不調に少し不安を抱えながら迎えた翌日、朝の採血でやはり体内の炎症を示す値であるCRPが少し上がってしまっていることが分かりました。

敗血症になって以来、CRPの値にはかなり敏感になっていましたが、まだ風邪程度の値だったので、とりあえずは内服薬で様子を見ることになりました。

大丈夫、大丈夫。

敗血症の恐怖が蘇ってきそうになるのを必死でかき消しながら、『そうちゃんならきっと大丈夫』と自分に言い聞かせ続けました。

まだまだ小さくて分からないことばかりのはずの月齢のそうちゃんでしたが、でも時々不思議と、もしかしてなんとなく分かってるんじゃないかな…なんて感じることもあった私は、そうちゃんがいつも通りに過ごせるようにと願い、少し辛そうでもいつもと変わらないように笑顔で沢山話しかけて絵本を読んであげたりして1日を過ごすようにしました。

この日のそうちゃんは、とにかく気管の痰が多く、頻回に吸引が必要で、多呼吸の状態も続いていましたが、目に見えて大きく悪化する様子はないまま夕方を迎えていました。

いつも夕方になると勤務後に来てくださるNICUの看護師さん。

この日は、NICUでも特にお世話になった看護主任のNさんが遊びに来てくださいました。

いつも通り勢いよく登場すると、そのままそうちゃんを食べてしまいそうな勢いで抱きつき触りまくり、これにはそうちゃんも驚いたのか目をまん丸にして良いリアクションをして皆を笑わせてくれました。

「呼吸器外して抱っこしてもいい?」

そう聞かれて初めて、Nさんに昨日からそうちゃんが不調が続いていることを伝えました。

それでも「ちょっとだけ!」とお願いされて、Nさんはそうちゃんの気管の痰を吸引をすると、呼吸器を外していつも通りそうちゃんを抱っこし始めました。

私は少し心配でしたが、肝心の不調だったはずのそうちゃんの呼吸は不思議と落ち着いていて、普通に抱っこを楽しんでいるように見えました。

前日にはちょっとしたことでサチュレーションが大幅に下がって苦しくなり、この日も痰が多くて苦しそうな呼吸をしている時間の方が多く、CRPも上がっていてとても繊細な状態であったはずのそうちゃんが、呼吸器を外して抱っこし始めた途端にこんなにも余裕そうな呼吸になるのは、一体どういうことなんだろう??
もしかして呼吸器が合ってないのかな?
それともまさか気持ちの問題??

これには私だけでなく、GCUの看護師さんたちも不思議そうに首をかしげていました。

そしてそんな疑問をよそに、タイミング良く現れた仕事終わりの主人は、Nさんの抱っこを見て「いいな~」と羨ましがり、私たちも続けて抱っこをさせてもらえることになりました。

「こういう抱っこって、普通Nさんより親が先にするものじゃないんですか?笑」

「だって我慢できなかったんだもん~」

主人とNさんはそんな笑い話をしながら、それまでそうちゃんが不調だったのが嘘のように、とても和やかな楽しい雰囲気で過ごしていました。

そうちゃんは呼吸器を外したままでしたが、私が抱っこをしても、主人が抱っこをしても、サチュレーションを下げることもなく余裕なまま過ごすことができていました。

突然のそうちゃんの絶好調ぶりに、気づくと先生や看護師さんたちが集まっていて、皆が興奮気味に私たちのビデオカメラを使って動画や写真を沢山撮って喜んでくださり、なんだか家族が沢山いるようで、とても幸せな気持ちになりました。

帰る頃には、もうすっかり大丈夫な気がして、いつも通り私たちはそうちゃんに「また明日ね」と挨拶をして帰りました。

そうちゃんの調子も良さそうで、久しぶりに抱っこもできて、帰り道でも嬉しそうな主人。

ところがその帰り道、主人からの突然の話に私は言葉を失ってしまいました。

「落ち着いて聞いてね」
「今日ばあちゃん亡くなったんだって」
「明日朝一で実家に帰るから、少しの間そうちゃんのことお願いね」

主人は大学から実家を出ていましたが、それまでずっと一緒に田舎で住んでいた父方のおばあちゃんが突然亡くなってしまったとのことでした。

主人と帰省する度に、私にも優しい方言でよく話をしてくれて、デイサービスで作ったものをいつも沢山プレゼントしてくれた可愛いおばあちゃん。

数える程しか会えていなかった私でさえすごくショックだったのだから、主人はどれほど悲しかったことか。

そうちゃんといる間、そんな表情をひとつも見せなかった主人を思い出し、私はそうちゃんが産まれて救急搬送された時のことを思い出していました。

あのとき、自分も辛いはずなのに、私を心配してずっと笑顔で支えてくれた主人。

主人が笑顔でそばにいてくれたおかげで、私は安心してちゃんと泣くことができて、すぐに前を向くことができました。

主人がこんなに強い人だったなんて、そうちゃんが産まれるまで知りませんでした。

そうちゃんのCRPが上がってしまった状態で主人が帰省することに多少の不安はありましたが、今度は私が主人を支えてあげる番だと思いました。

主人がちゃんとおばあちゃんと後悔なくお別れができるように、今の私にできることは、主人が帰省している間にそうちゃんをしっかりと守ってあげることだと、そう思いました。

そうちゃんが産まれてから、どんなに仕事が遅くなっても終電ギリギリでもそうちゃんとの面会を欠かさないできた主人は、きっとそうちゃんと離れることに寂しさもあったと思いますが、翌朝早くに、遠く故郷へと帰っていきました。


写真は私たちが抱っこしていたのを看護師さんたちが撮ってくれたものです流れ星
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