そうちゃんの成長と変化をまとめた用紙を看護師さんに渡してからも、しばらくは主治医のふたりに会うことはありませんでしたが、代わりに複数の看護師さんや臨床心理士の先生などがその内容を皆で共有したことを教えてくださり、ちゃんと見ていただけていることが分かると、私は少しホッとしました。


元々は主治医に向けて書いたものではありましたが、色々な方から「色々と知らなかったことも知れてよかった」「自分にできることを考えたい」など優しい言葉を沢山かけていただき、それは私にとっても大きな励みになりました。

中でも特に私の胸を熱くしたのは、私が好きだった女性のお医者さんからのひとことでした。

「そうちゃんのこと、しっかり見ていきますから、安心してくださいね。」

とってもシンプルな言葉。
でも、私がずっとほしかった言葉。

私たちはできないことを無理に要求したかったのではなく、後悔しないようにやれることはすべてやりたかっただけだったのです。

書いてよかったと思わせてくれた周りの方々に感謝の思いでいっぱいでした。


これをきっかけに、これまで以上に色々な方が声をかけてくださるようになり、日々のそうちゃんの様子を気にかけてくださったり、そうちゃんのために良さそうなことを考えては提案をしてくださったり、小さな変化を教え合えたり、些細なことを相談できたり、そんな雰囲気が自然とできているのを実感していました。


そしてしばらくして、若い主治医の先生に会うと「書いていただいたもの、読ませてもらいました。」と静かに話しかけてくださり、とても人見知りで大人しいその先生からはそれ以上の言葉はありませんでしたが、こんな風に検査結果以外のことを自ら話してくださったことは初めてだったので、その大きな一歩を私はとても嬉しく思っていました。


そして肝心なセンター長はというと、その後会うことがあっても話すことがあっても、そのことについて触れることは一切ありませんでした。

きっと、不器用な人なのかな。

決して言葉にはしてくれませんでしたが、ある日突然、そうちゃんの呼吸器の設定を下げられないか挑戦したいと、これまでにない前向きなことを言い出したのを見て、もしかしたら何か伝わってくれたのかもと感じて、私は素直に笑顔で「ありがとうございます」と伝えることができました。


本当に少しずつではありましたが、距離を縮められているような気がして、これからも自分からどんどん働きかけていこうと前向きになることができました。

そして私は早速、この頃気になっていたことをふたつ相談させてもらうことにしました。


ひとつめは呼吸器の結露により、吸気のタイミングで大量の水滴がそうちゃんの気管に流れてしまい苦しそうなこと。
これは細菌感染の原因にもなるので、早急な解決策が必要なことでした。

自発呼吸が活発なことと外気温が低いことが結露の原因のようでしたが、管の中のことなのでじっくり見ていないとなかなか気づくことはできません。
私はたまたまずっと見ていて時々苦しそうにむせるようにしていたので気づきましたが、看護師さんも誰も気づいていませんでした。

管にアルミを巻いて結露予防をしてみたりと色々試してはくださいましたが、なかなか上手くいかず、結局こまめに吸引するという対策しかできませんでしたが、一生懸命考えてくださったのでちゃんと相談して良かったと思いました。


そしてふたつめは、そうちゃんの睡眠不足について。
これは常々看護師さんも気にしてくれていたことでした。

おそらく呼吸器の水滴の問題のせいもあるのだろうとのことでしたが、私がいる間は寝ても1時間程度で、夜中も起きてることが多いと聞き、赤ちゃんは寝るのが仕事だというのにこれで大丈夫なのかと私も心配になっていました。

急性期の赤ちゃんの多いNICUという環境では、機械音も多く、照明も24時間明るいため、ストレスも多いのかもしれないと先生は話し、しばらくはこまめな吸引で水滴の不快感をなくし、様子を見ながら対策を考えていくということで話は終わりました。

私の相談に、センター長はこれまでにないほどゆっくりと向き合ってくださり、一緒に考えてくださいました。

相談したからといって、すぐに解決できることばかりではありませんが、それでも現状を知ってもらえて考えてもらえただけでも、相談して良かったと心は一気にとても軽くなっていました。