そうちゃんの回復ぶりには、私たちだけでなく医師や看護師の皆さんもとても驚いていたようで、毎日のように色々な方が来ては喜びの声をかけてくださっていました。

その度に、本当に奇跡的なことだったんだと実感すると共に、これほど沢山の方々がいつもそうちゃんのことを支えてくださっていることに改めて気づかされ、感謝してもしきれない思いでいました。


決まっていたCT検査は、病院側の都合でなかなか予定が立てられずにいましたが、その間にもそうちゃんは色々なことができるようになり、肺がもうひとつあるかもなんて不安なことを言われたにも関わらず、その生活は少しずつ確実に敗血症前の状態に戻っていっていました。


点滴が必要になってからは、そうちゃんの体拭きはずっと看護師さんにやってもらっていましたが、点滴に気をつけながら看護師さんと一緒にという条件でまた私たちでやらせてもらえるようになり、するとまたひとつ、私たちは久々に触れるそうちゃんの体に大きな変化が起こっていることに気づきました。

それは、お腹の腫瘤がとても小さくなっていることでした。

そしてさらには、そうちゃんには生まれつき臍ヘルニアと鼠径ヘルニアもあったのですが、それも同じように何もなかったかのように小さくなり普通の大きさになっていたのです。

臍ヘルニアと鼠径ヘルニアは珍しいものではなく、自然に治るとは聞いていましたが、お腹の腫瘤まで同じタイミングでこんなにも突然小さくなるものかと驚き、すぐに看護師さんに知らせましたが、看護師さんも先生方も驚くばかりで、やはりその理由はよく分からないままでした。


どれも嬉しい変化ではあったのですが、これほど沢山のことが理由も分からずに突然良くなっていくのを目の当たりにすると、今何が起こっているのか、そしてこれまでが何だったのか、これから一体どうなっていくのか、とにかく色々なことがただただ不思議でしかありませんでした。


そんな絶好調のそうちゃんがCT検査をできたのは提案をしてもらってから10日ほど経った頃でした。


検査当日、朝からNICUへ行くと、先生や看護師さんたちが検査の準備のためにそうちゃんの周りを慌ただしく行き来していて、いつもとは違う雰囲気に私は少し緊張していましたが、その隣でいつもと変わらずきょとんとしながら口をモゴモゴと動かしているそうちゃんを見るとホッとできました。

そうちゃんにとって、NICUを出るのはこの病院に搬送されて以来、この日が初めてでした。

ほんの少しの時間だけ、ただ検査に行くだけでしたが、そうちゃんにとっては初めてのお出かけなんだなと思うと私は何かこみ上げてくるものを感じていました。

いざ出発のとき、そうちゃんは人工呼吸器から外され、代わりに先生が手動で呼吸を補助してくれるバギングというものに繋がれました。

そして沢山の先生方や看護師さんに囲まれながら小さなそうちゃんのベッドがNICUから出て行くのを見ながら、またひとつ大きな壁を乗り越えようとしている息子の姿に自然と涙がこぼれてしまっていました。


検査は30分ほどで終わり、先生や看護師さんたちがとても和やかな雰囲気で帰って来る様子を見て、私は安心しました。

「そうちゃんすごく良い子だったよー」

「検査中は自発呼吸だけで頑張れたんですよー」

口々に看護師さんたちが教えてくださるそうちゃんの頑張りを知ると、またひとつ大きくたくましくなって帰ってきてくれたそうちゃんを心から誇りに思いました。


結果は分かり次第と言われましたが、その翌日にはセンター長から結果を伝えたいと言われ、急遽夕方に話をすることになりました。