年末年始の休みに入り、病院はとても閑散としていました。

長期休暇中は医師の人手も少なくなるので、先生方は赤ちゃんたちの具合が悪くなったり急変したりしないか、この時期はいつもドキドキするそうです。

センター長もそれを心配してか、休みに入る前にそうちゃんのところへ来て「しばらく頑張ってくれよー」と声をかけてくれていました。

以前のことを思うと、センター長は不器用ながらも優しさを見せてくれるようになり、なんだか少し心を開いてくれたような感じがして、私はとても嬉しい気持ちでいました。


今年は本当に色々なことがあったな…。

不安な日々の方が圧倒的に多かったはずなのに、こうして改めて振り返ると、なぜか不思議と思い出すのは嬉しかった思い出ばかりで、きっとそう思えるのはそうちゃんが強く病気と闘い成長する姿を沢山見せてくれて、私にも前向きになる力を沢山くれたおかげだと思います。
この時はそうちゃんと一緒に年を越すことができる喜びで胸がいっぱいでした。


そうちゃんのいたNICUは24時間面会が可能だったので、新年になる瞬間はそうちゃんと3人で過ごそうと主人と決めていました。


大晦日の日、夕方に一度帰宅し、両親たちと食事をして過ごしたあと、再び病院へ向かい、そうちゃんのところへ戻ったのは23時半頃でした。

そうちゃんは起きているようでしたが、眠いのか目はうつろで、不思議なくらいに呼吸も安定していました。

「落ち着いてていい感じだね」

その様子に私たちはとても安心していました。

何度も何度もあくびを繰り返すそうちゃんを見て笑いながら、新しい年を迎える瞬間を待っていました。

そして、新年を迎えると「今年も絶対に素敵な年にしようね」と3人で約束をしました。

きっと良い年になる。
なぜか私は根拠のない自信に溢れていました。

そして、私たちはそうちゃんが寝たのを見届けると、そのまま病院近くにある有名な神社へ初詣に向かい、そうちゃんの健康だけをただただ願いました。


まだまだ乗り越えなければならない壁が沢山あることは分かっていましたが、この時は全て乗り越えられるような気がして、悪いことなんて考えてもいませんでした。


元日の朝には、家族とおせち料理を食べたあと、私たちはいつも通り病院へ向かいました。

そしてNICUに入るとすぐにセンター長がいたので、互いに新年の挨拶をしました。

すると、センター長はそのまま私たちとそうちゃんのところへ一緒に来ました。

「実はちょっとCRPが上がってたので、飲み薬で様子見てます。」

CRP…??
炎症の値だと言われましたが、突然のことでそれがどういうことなのかもよく分からず、でもセンター長の言い方や表情からして、重大なことではなさそうだったので、とりあえず「よろしくお願いします」と言うことしかできませんでした。


まさかこのあと、そうちゃんにとって、私たち家族にとって、とても大きな試練が訪れようとしているなんて、この時は誰も気づいていませんでした。