看護主任さんとセンター長の話をして以来、色々な看護師さんや臨床心理士の先生が私とそうちゃんのところへ来てくださり、中にはセンター長に対しての不満をぼやく人もいたりして、そんな様子を見てなんとなく私の話が看護師さんたちに共有されたのかなと感じていました。

センター長の耳にも届いているかもと思うと、やっぱり直接言うべきだったかな…とも思いましたが、スッキリできていたので、後悔はしていませんでした。


毎日昼から夜までずっとNICUにいても、相変わらず不思議なくらいにセンター長と会うことはありませんでした。

その代わりに、そうちゃんの隣の赤ちゃんの主治医の女性の先生は毎日のように見かけ、保育器にいる小さな赤ちゃんに向かって「今日も頑張ってるね~」と優しく声をかけている様子に私はいつも素敵だなと温かい気持ちになっていました。

センター長のことを理解したい気持ちもあって、沢山の命と向き合う医師たちは患者1人1人に感情を入れていたらきっと疲れてしまうだろうしその距離感を仕方ないと思うようにしていました。
でもやはり、心のどこかでは、ドラマで見るような熱心な医師もきっといると信じたい気持ちも捨てきれなかった私は、その先生の存在にいつも救われていました。

その先生は、隣にいるそうちゃんにも「最近表情豊かになってきたよね~」などといつもさりげなく声をかけてくださり、主治医でもないのにそうちゃんの小さな変化にちゃんと気づいてくださる優しさに私はとても感動していました。

この先生が主治医だったら赤ちゃんも幸せだろうなと素直に思いました。

そうは言ってもそうちゃんの主治医はセンター長と大人しい先生の2人。
これからどう関係を築いていけばいいか、ちゃんと自分でも考えなければと思いつつ、何もできないまま時間ばかりが過ぎていきました。


そうちゃんは日に日に表情がどんどん豊かになり、毎日私たちを楽しませてくれていました。

まだうっすらではありましたが、両目を開けられるようになったそうちゃんは、優しい醤油顔の主人によく似ていて、看護師さんたちからもパパ似だね~!と言われ、その度に主人はとても満足そうに笑っていました。

手におもちゃを付けてあげると、不思議そうにじーっとそのおもちゃを見つめ、見えてるのかな?とそんなことを想像しているだけで嬉しく、その変化を見逃さないようにと毎日沢山お話して沢山触れて一緒の時間を大切に過ごしました。


この頃、私がそうちゃんと過ごしながら大切にしていたのは『刺激と癒し』でした。
沢山脳を刺激してあげて成長を手助けしてあげたい、でも疲れたらホッと癒されるようにあたたかく包んであげたい、すべてが自己流で効果もよく分からないままでしたが、そうちゃんの表情を見ながら毎日自分なりに試行錯誤していました。

そうちゃんは気づけば腕の力もだいぶ抜けて大きく広がるようになったり、口の力も抜けてきてあくびも大きくなっていたり、大きな変化はなくても、確実にゆっくりと小さな変化を沢山増やしてくれていました。


先生方がいないと入れなかったお風呂も、看護師さんが3人体制で1~2日おきで入れて下さるようになり、お風呂に入るとそうちゃんは決まって気持ち良さそうに目を閉じてうんちをしてしまい、ただでさえ他の子よりも大変なお風呂をさらに大変にし、大慌ての看護師さんたちにいつも申し訳なく思いましたが、そんなそうちゃんとの面白い思い出が増えていくことにも私はこっそりと幸せを感じていました。


体もまだゆっくりしか動かせなくて、声も出せなくて、でも表情で沢山のことを教えてくれて、なんだかマスコットのようなそうちゃんの周りには気づくと沢山の人が集まるようになっていました。
小さな変化に気づくことを同じように楽しんだり喜んだりしてくださる看護師さんが沢山いてくれて、そんな様子を見ていると、なんだか家族が沢山いるみたいで、そうちゃんは幸せかもと思えるようになってきました。


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