NICUをあとにした私は、すぐにでも主人に検査結果を報告したい気持ちでいましたが、まだ仕事中だったので、お昼休みの時間を待って電話で報告することにしました。


12時ちょうどの突然の電話に、主人は電話口で少し驚いた様子でしたが、午前中の出来事を話すと、安堵のため息が聞こえてきました。

言葉にならない喜びが、言葉はなくても私には十分に伝わってきました。

主人は「早くそうちゃんに会いたい」と嬉しそうに話していました。


無事報告も済んで、少しお腹がすいた私たちは、病院のレストランで食事を済ませて家に帰りました。


行きと同じはずの景色が、違う景色に感じるくらいに、気持ちはとても軽くなっていました。


試練はきっとまだまだこれからで、乗り越えなければならないことも沢山あることは分かっていましたが、そうちゃんならこれからもまた奇跡を起こしてくれるんじゃないかと思えました。


こうして喜びに溢れていた私たちでしたが、少しだけ気になっていたことがありました。

「1日で診断が真逆になることってあるんだね」

主人の何気なく言ったその言葉で、私も感じていた小さな違和感を思い出しました。

それは、前日のお話の時に、センター長から「小眼球です。」とはっきりと言われていたことでした。
その上で、今日はより精密な検査をすると、私たちは説明を受けていました。

小眼球ではなかったことの喜びで、そんな疑問もすっかりかき消されていましたが、前日には確定診断されていたことが翌日には違ったなんてことがあることに正直とても驚いていました。

医師も人間なのだから、時にはそんなこともあるのかな。
もちろん適当に診断した訳ではないと思うし、診断が変わったことは私たちにとってはむしろとても嬉しいことだったのだから、と頭では考えていました。

でも、心の中は少し複雑でした。
これほど診断が大きく変わったことに何も説明もなく、笑ってごまかしていたように見えたセンター長に少し違和感を感じてしまい、モヤモヤとしたものが心の片隅に残ってしまっていたのです。

診断を受けてからのとても苦しかった時間を思い出すと、やはりどうしても、もう少しちゃんと検査してから伝えてほしかったな…せめてもう少し説明をしてほしかったな…と思ってしまいました。

できれば、もう同じ思いはしたくありませんでした。
医師からの言葉は、私たちにとっては想像以上にとてもとても重たかったのです。


そう考えると、ちゃんともう一度、センター長に説明を聞くべきかとも思いましたが、でもその時は、そうちゃんのことを思うと、やはり今は素直に喜びをかみしめていたくて、私たちは気持ちを切り替え、そのモヤモヤとした感情を引きずることをやめることにしました。