隣に息子はいなくても、身体はどんどん母親の身体になっていくので、3時間おきに看護師さんが来ては起きて、乳頭のマッサージなどをしなければなりません。

この時間は、他のお母さんたちの授乳時間とも重なるため、起きる度に元気な赤ちゃんの泣き声が聞こえてきては、少し切ない気持ちにもなりましたが、いつか息子に授乳することを楽しみに一生懸命マッサージをしました。


あっという間に朝は来て、主人は動けない私の代わりに、息子に会いに病院へ出かける準備を始めました。

当然ですが、NICUは色々と規制が厳しく、携帯の持込みも禁止されています。
主人は産まれてから一度も息子の顔を見れていない私のために、許可されたビデオカメラを持って「今日は撮ってくるから楽しみに待ってて」と言うと、嬉しそうに出かけて行きました。


やっと息子の顔が見れると思うと嬉しくて、でも、私と違って息子に直接会いに行ける主人が羨ましくて、やっぱり少し切ない気持ちになってしまう自分もいました。


そして、術後すぐは麻酔もよく効いていて気づきませんでしたが、1日経つと傷の痛みや後陣痛を強く感じるようになり、動きたくても動けない、寝たくても寝られない、それでも3時間おきにマッサージをしなければならない、沢山のお母さんたちが経験してきたであろう大変なときを私も初めて経験しました。

本当にお母さんたちってすごいなと思いました。

色んな痛みを乗り越えてきたお母さんたちは、本当に強くて愛に溢れていて、私もそんなお母さんになりたいと思っていました。

息子が側にいない状態で、モチベーションを保ちながらマッサージを続けることは辛く感じる瞬間もありましたが、離れていても一生懸命頑張ってくれている息子が、間違いなく私の大きな心の支えになっていました。


そして昼を過ぎた頃、病院に行っていた主人が、私の両親を連れて病室へ来てくれました。

主人と母は変わらず笑顔で入って来ましたが、産後初めて会う父は、眉を下げて戸惑ったような表情で私を見ていました。

孫が搬送されてしまったこと、そして娘が術後の痛みと息子に会えない淋しさと闘っていることがとても辛かったんだと、あとから母が教えてくれました。
不器用な父は、すべて顔に出てしまっていて、父らしいなと思いました。


そして、病室で初めて、主人が撮ってきてくれたビデオカメラで、息子の姿を見ることができました。

ほんの数分の映像でしたが、裸の小さな息子の身体には色んなものが沢山ついていて、口には呼吸器のようなものがついていて表情もハッキリとは見えず、そして先生から聞いていたように足に変形があるのが分かりましたが、それでも初めて見る息子は一生懸命に生きていて、私はそんな頑張ってる姿が見れただけで嬉しくて嬉しくて、何度も何度も巻き戻しては同じ映像を見続けていました。