息子と一緒に大きな病院にやって来た。

 

 

発達外来は4階の少し奥まったところにある。

 

 

予約をしてから6か月。やっと順番がまわってきた。

 

 

 

事前に、送られてきた問診票にたくさん書き込みをして持って行った。

 

 

 

受付をすると、たくさんの子供たちがいる待合室へ。

 

息子は好きなおもちゃのもとに直行する。

 

待合室には小学生くらいの子が多く、みんな静かに落ち着いて順番を待っている。

 

 

 

「大きくなるとこんな感じになるのかな。」

 

「それとも、この子達は発達障害とかじゃない、別の何かで来ているのかな?」

 

と思った。

 

片時も目を離せない息子とは、随分違う気がした。

 

.

 

 

後になってわかったことだが、その待合室にいるのは、ほとんど発達障害の診察で来ている子だった。

 

発達障害を持つ子も特性は色々。

 

息子とは全く違うタイプの子がたくさんいる。

 

そして、年齢が上がるとかなり落ち着いて見える。

 

この頃の私は、全く知らなかったことだけど。

 

 

 

 

 

しばらくすると、診察室に呼ばれた。

 

年配の穏やかな雰囲気の先生が迎えてくれる。

 

(この先生が、小学校1年生までの主治医になった。)

 

 

 

先生は問診票を見ながら私に質問をした後、息子に話しかけた。

 

通常、息子は人から話しかけられても、やり取りが成立しないこともあるが、

 

先生とはコミュニケーションが取れている。

 

「注意の引き方がやっぱり上手いな」と思った。

 

 

 

 

先生が絵を見せて、「被るものはどれ?」と聞くと、息子は絵の中から帽子を指さす。

 

 

息子がそんな質問に答えられることに、とても驚いた。

 

 

 

いくつか質問を繰り返した後、

 

「この子、見かけより、よくわかっていますよ。色々なことが。」

 

先生がつぶやくように言った。

 

 

 

 

 

20分ほどやりとりをした後、先生に聞かれた。

 

 

「発達障害について、ご自分で調べたりすることはありますか?」

 

 

「ネットなどで少し調べましたが、色々と考えてしまうだけなので、まず先生に診ていただいてから…と思って。あまり詳しいことはわかりません。」

 

 

「発達障害があった場合は、結果をはっきり聞きたいですか?」

 

 

「はい、結果が出たら聞きたいです。」

 

 

 

 そう言ったものの、これから発達検査をするし、今日、結果がわかるものではないと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「自閉症です。」

 

 

 

「えっ?」

 

 

 

「検査がこれからなので、正式な診断はこれからですが。」

 

 

 

とてもあっさりしていた。

 

 

 

 

頭を何かで殴られたような。

 

とても強い衝撃を受けた。

 

血の気が引いて、目の前にサーっと白い幕が下りてきたような感覚。

 

こんなショックを受けたのは、生まれて初めてだった…と思う。

 

 

 


 

 

こんなにもショックを受けてしまったのは、私に勘違いがあったから。

 

 

 

今は、自閉スペクトラム症という名前が知られているが、

 

息子が診察を受けた10年以上前は、「自閉症」と言われると、

 

以前の狭義の自閉症を連想する人が多かったと思う。

 

 

先生の言葉を聞いて、私は狭義の自閉症のことだと勘違いをした。

 

 

しかも、無知だったので、その「狭義の自閉症」と、私が予想していた「発達障害」が、スペクトラム状に繋がっていている同質のもの、ということを知らなかった。

 

(そもそも自閉症が発達障害の中に含まれることを理解していなかった。)

 

 

 

予想外の名前が、予想外のタイミングで出てきたから、心底驚いた。

 

 

 先生も、いきなり「自閉症です。」とか言わずに、もう少し丁寧に説明してくれたら良かったのにな…と、今は思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

用意していた相談がたくさんあったので、時間が許す限り質問したが、先生の回答が全部聞けていたのか…、正直自信がない。

 

「アスペルガー症候群について」という小さな冊子をもらった。

 

当時は、ASDという言葉もメジャーではなかったと思う。

 

 

 

 

 

ただ、一つ良いことがあった。

 

この時点で療育の申し込みができることになった。

 

 

 

プレ幼稚園の様子を聞いた主治医が提案してくれた。

 

「幼稚園に入る前に、半年間、集団生活を練習できる療育教室があります。

 

入園先の幼稚園とお子さんの過ごしやすい環境について情報共有できるし、親御さんも別室で研修をうけられるから、おすすめします。」

 

「是非、入れていただきたいです。お願いします。」

 

 

 

 

 

 

療育を受ければ、息子が変わって、幼稚園で過ごしやすくなるかも…

 

この時はまだ、そう思っていた。

 

 

 

療育は子供を変えていくと言うより、

 

子供の特性を正しく理解して、その子に合った環境を考えるもの。

 

自信を持たせたり、安心感を与えるもの。

 

子供の成長を助けてはくれるけれど、子供を変えるものではない。

 

今は、そう思っている。

 

 

 

 

ただ、この時に入った療育教室は、今振り返っても一番効果が高かったし、療育の質が良かった。

 

私たちをその後も支えてくれる、本当に「受けてよかった」と思えるものになった。

 

この療育の話は、また後日…。

 

 

 

 

 

 

 発達検査は来週。

 

さらに1ケ月後に、正式な診断がおりることになった。

 

 

 

 

 ~ 続く ~

 

 

↓別のブログで、こんな記事を書いています。

 

 

 

 

 

 

 

 

    

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

当ブログは、過去の回顧録です。

 

息子の現在の姿ではないことをご了承ください。

 

個人の特定を避けるため、具体的な数字や名称等にはフィクションが織り交ぜてあります。

 

「発達障害を持つ子をとりまく現実をお伝えする」という当ブログの目的のため、発達障害に関するエピソードは事実に基づく記載をしています。