先週、新しく英語の先生が転任してきた。
彼の名前はマカロン。
なんだかとっても美味しそうなネーミングである。

木曜日のESL授業が、ショルニコフ先生から彼へ変更になったと聞いたので
いったいどんな人物なのかその授業に参加することにした。

現れたのはアディダスの紺色パーカーにヨレヨレのジーンズ、それに白いスニーカーを履いた彼。
おまけに顔中が毛だらけで暑苦しかったが、頭の方はまだ冬だった。
日本だったらまずあり得ない教師の格好である。

丸い円卓の机にみんな集まって、それぞれ自己紹介をしていく。
まず始めはサトシと同じクラスのジャスパー君だ。
「ボクはドイツ生まれです。ドイツ語と英語とスペイン語が話せます。
あ、でも、日本語とロシア語と中国語とアラビア語と、ええーっとそれから、ヘブライ語と、、、」
そう、彼は自分が話せない言語をツラツラと並べ立てていたのであった。
気持ちよさ気に話している彼を、マカロン先生が途中でさえぎる。
「ジャスパー君、キミの答えを聞いていたら日が暮れてしまいそーだね。
ま、そのへんでやめとこうか。」

それから、ハンサムボーイ・ブラジミール君の出番がきた。
「ボクはロシアから来ました。卓球が大好きです。
ボクはロシア語、英語、それからドイツ語を話せます!!」
とっても自信満々だ。

さて自己紹介も終わり、前回やり残していたプリントの続きをすることに。
黒ブチのお母さん犬と5匹の子犬の短い話を読んで、できるだけたくさん文章を書きなさい、
という問題だった。
と、40センチほどしか離れてない至近距離にいるブラジミール君が、すごく男前な表情をして
ものすごい勢いで文章を書いている。
四方八方、どの角度から彼を眺めようとめちゃくちゃカッコいい彼は、最近サトシと仲が良い。
しめしめ、この調子だといつかウチへ遊びにきそうだナ。 
なんて訳の分からない妄想をする。

マカロン先生がツカツカとこちらへ歩み寄ってきた。
「ああ、ブラジミール。キミはとても上手に文を書いているけど、一つだけ重大なことを
間違っているよ。
全部の文章の頭とお尻がひっくり返ってるぞ!」

Fat are Little, Mike and Emily. とは彼の作った文の一例。

途端、ブラジミール君はいまにも泣き出しそうになった。
英語が話せる、なんて自信たっぷりに言っていたけど、まだまだ先は長い彼の英語だ。

外国の子たちはペラペーラ流ちょうに話してるけど、実はあまりわかってなかったりすることが
わかって、ちょっと安心した木曜のESL授業だった。