夕方、いつものように学校へ子供を迎えに行ったときのことだった。
今日は水曜日、3時半にはサトシをトラム(路面電車)で30分ほどかかるライプチヒのはずれ
の柔道場へ連れて行ったので、このときは学校にいない。

今日の夕食は何にしようかなあ~、、、フンフンと鼻歌交じりに学校へ近づいたら
辺りはなにやらものすごい人だかりだ。
いったいどうしたっ?!
みると、電車は立ち往生、、道路をパトカーが三台ふさいでいて、学校には包囲網が
張り巡らされている。
これまた背中にデカデカ「POLIZEI」 (policeのドイツ版)と白抜きで書かれた黒い制服を着た
ナチスを彷彿とさせる恐ろしげな警官が何十人も学校の周囲をうろついていた。
ドイツの警官は日本の警官と訳が違う。意味も無く存在が恐怖なのだ。
そして、パトカーの数は約20台。
とんでもないことが今、学校で起きている・・・・・

この先は学校へ行けないから、遠回りをして行ってどんな様子か聞いてみて。
併設した幼稚園(pre-school という)の先生が近くにいたので、こう教えてもらった。
回り道をして校舎に入ると、たくさんの両親が心配そうに玄関口を見守っている。
数人の知り合いに聞いてみれば、どうやら誰かが「ロックダウン」の操作を行ったらしかった。
ロックダウンとは、緊急事態が発生したときに学校内にある全扉が閉じ、
外へ出られない仕組みのことだ。
警察のただならぬ雰囲気から、彼らは何か隠してるのでは、、とみんな疑っていた。

それから一時間後。
ようやく警官がスピーカーで
「犯人は建物の中にはいない。これから生徒を一名ずつ帰す。」
と叫んだ。
その場にいたみなは一斉に安堵の溜息だ。

そのあとさらに30分が経過する。
子供たちが一人ずつ名前を大声で呼ばれ、親と対面したときにはお互い涙ぐんでいた。
キスしたり、抱擁したり、ガイジンは何をするにも大げさだ。
いつもは苦手だけど、こんなときにはこんな分かりやすさっていいもんだ、と思う。

リカとついに対面したとき、彼女はワンワン泣いていた。
でも5分後、彼女がおやつにつられて涙目で笑っていたのには、こっちも笑いながら涙ぐんで
しまったけど。

リカが言うには、教室へ入る際、警官が銃を彼女達に向けていたのだそうだ。
犯人を想定してのことだろうが、私は今まで生きてきてそんなこと一度も経験したことがない。
それで、かなりの生徒が恐怖のあまり泣き出したのだろう。

ここは外国。
いくら慣れても、ここはドイツだ。
何があっても、何が起こっても全く不思議ではない国に住んでいる。
でも、なにはさておき、リカが生きててよかったね、、
近所で買ってきた温かいピザを家族みんなで食べる幸せが、今夜は一段と身に染みた。