▼生死をさまよう荒行

5年間、700日に及ぶ壮絶な回峰行の後にさらに待ち受ける、命を落としかねない荒行。

一般に「堂入り」と呼ばれる修行がそれだ。


これは堂内に籠もり、9日間もの間、不眠不休で1日10万回、不動明王の真言を唱え続けるという、過酷きわまる行だ。

不眠不休なだけではない。

実はこれ、「断食、断水、不眠、不臥」の行なのだ!

にわかに信じられないことだが、小用を足す時以外には、座れない、という決まりがある。

食事はおろか水を呑むことも許されない。

これが、9日間にわたって続く。


一般的に、人間が断食・断水状態で生きられる限界は3日間とされていることを考えると、自殺行為にも等しい究極の荒行だ。

当然、どんなに鍛えられている行者であっても、死の淵をさまよう。

堂入り後半の行者は、さながら生きた亡霊のように、「骨と皮」だけになり、支えがなくては歩けない状態になる。

行者はまさに死の一歩手前にいると言っていい。

その様子を映像で見ていると、もはや肉体の限界などとっくに超えてしまっていて、ただ、使命感や精神の力だけで生命をどうにか保っていることがわかる。

この行中に亡くなった修行者も実際にいるので、別名「生き葬式」と呼ばれる。

この生死の境をさまよう過酷な9日間の行をくぐり抜けると、それで終わりではない。


さらにここから、より一層厳しい、残り300日(2年間)の行が始まる。