長岡メンバーとの温泉旅行の夜、





長岡の“奇跡”長谷川は、私と共に、宴会で使った男子部屋を片付けていた。




テーブルを移動し、布団を配置するためだ。





ふと見ると、部屋の畳の上に、長谷川の教育担当M女史が最近購入した一眼のデジカメがあった。





誰かが踏みつけてはいけないと思い、私は長谷川にこう言った。







『Mのカメラを床の間に置いといて』





長谷川は、「…はい…」と、かなり低いテンションで返事をした。





ん?なんか様子がおかしい…





と思って、長谷川の様子を見ていた…





すると、カメラを拾いあげた長谷川は、


キョロキョロと自分の周りを見渡し…






目一杯さりげなく、カメラをテーブルの上に置いた。



『おーい!ちがうやん!』

私が指摘すると、長谷川は笑いながら言った。



「トコノマ?ですよねえ?」





そう。

長谷川の辞書には床の間という文字はなかった。





『お前は初来日の外人か!フジヤマ、ゲイシャ、スシ食いねえ!てか!』


と、勢いよく突っ込む気力も湧かず、



『……そこの、窪んで掛軸がかざってある所が床の間って言うねん…』と説明して、ため息をつきながら布団に入り寝た。





まあ、長谷川は温泉旅館に、バスタオルや自宅で使う風呂セット一式を持ってきた可愛らしい世間知らずだ。




この職場にいる間に、仕事以外にも様々なことを学ぶんだろう。




なんだか羨ましくも思えた。