1992年、キューバ・シンコフエーゴス湾に面した原子力発電所の建設がストップしました。
ソビエト連邦の全面的な協力の下、建設が進められた原子力発電所は、ソビエト連邦の崩壊とキューバの経済危機により、資金の調達が不可能となり、完成間近で白紙撤回となりました。
エネルギー政策の転換
お金不足やアメリカの経済封鎖で、石油や石炭などのエネルギー源の輸入ができない、ないない尽くしのキューバで原子力に頼らない新たなエネルギー計画が持ち上がります。
それは、地域で利用可能なバイオマス、水力、ソーラー、風力といった持続可能なエネルギー資源の開発です。
サトウキビの副産物から発電
キューバの主要産業は、サトウキビ栽培です。
サトウキビから砂糖を取り出した時、大量のガラがでます。サトウキビのガラのことをバガスと言います。
このバガスを発電に使用できないか?
近年注目されているバイオマスエネルギーの一例ですが、キューバのバガス利用状況は、郡を抜いています。
サトウキビから砂糖をとる製糖工場のほぼ100%がバガスによる発電で全エネルギーをまかない、
キューバ全体の電力エネルギーのなんと30%をまかなうまでに成長しているとのことです。
バイオマスエネルギーの占める割合がここまで高い国はキューバ以外にはないように思われます。
送電線の届かない山奥は水力、風力、ソーラー、なんでもござれ
キューバは医療大国、どんな小さな村でも診療所があり、また電気が使える状況です。
それには、無理に町から送電線をひくことをせず、水力、風力、ソーラー、とその場にある資源を有効に活用しているからです。
キューバのカストロがゲリラ戦を展開したシエラ・マエストロ山脈にある村では、キューバでは少ない山村という特徴を生かし、水力発電によって、全電力をまかなっているとのこと。
キューバでは貿易風が卓越していて、毎年一定の方向から一定量の風が吹きます。
これを利用した風力発電利用も海岸沿いの各都市では一般的なようです。
キューバの農村に行くと、農家の屋根に太陽電池が輝くのが見られます。
僻地は、太陽で発電。
電気量が天気に左右されるという不都合はあるものの、なかなか好調なようです。
自然のエネルギーは、田舎ほど効率がいいエネルギーになるようです。
薪は今でも重要な燃料源
世界のほとんどの地域では、今でも薪が貴重な燃料源です。
キューバでも、暖房、煮炊き、などなど、都市ガスが不足しがちな近年では、薪が主要な燃料源となっているようです。
日本でも近年、薪ストーブなどで薪のよさが見直されてきています。
薪ストーブ、薪での煮炊き。
風情があって環境にも優しくいいですね。
ただ一つ、現代において、薪はとても手に入れるのが難しいという問題があります。
原料となる木ですが、
キューバではおもしろい試みが行われています。
地区の住民が必要だと思えば、どこでも木を植える申請をし、許可が下りればどこでも木を植えていい。
土地所有ができない社会主義国独特の制度ですが、この制度のおかげで、町は森に包まれ、燃料の薪も至るところで生産できます。
かつて武蔵野を覆った雑木林に通じるものがありますね。
エネルギー問題は、やる気で解決できる
電力会社は危険な原子力発電所の必要性を強調しますが、代替エネルギーの問題は、一般の人が考えているより進んでいます。
石油がなくなれば原始生活に戻るという考えは、もう古い。
世界各地で新たな試みが行われています。
日本も危険な原発に頼らず、もっと自然でクリーンなエネルギー源づくりに取り組んでほしいものです。