「智くん、どしたの?」
すると、智くん、おもむろに俺を見て。
「しょおちゃん。おいらのこと、好き?」
へ?どしたの?改まって。
俺は常に、ことあるごとに、智くんへの愛を語り、伝えてきたつもりですけど。
「もちろん、大好きです。世界一、宇宙一、愛してます」
言葉で多種多様のことを伝える仕事を生業としているのに。
智くんへの想いは、言葉にしてしまうと、陳腐に思える位。
伝えきれないこの想い、って位に大きな大きな気持ちを抱えておりますよ。
言葉では伝わらない分をカバーすべく。
俺は、隣にいる智くんの身体を抱き締めようとした。
「おいらも、そうなんだよね…」
すると、智くんがつぶやいたんだ。
ん?
そう、って、愛してるってこと?
智くんからも、"そう"じゃなく、ちゃんと愛の言葉を聞きたいなと思いましたが。
「智くん、どうしたの?何か気になること、あるの?」
愛の言葉をささやいた割には("そう"だけですけど、智くんが発したんだから愛の言葉です!)、何だか考え込んでいるような智くん。
(考え込んでいる顔も、かわいいんだよね~。ちょっと口唇、尖らせてさ)
そんな智くんの顔を覗き込みながら、訊いてみた。
「…おいらって、LGBT、なのかな?」
…ああ。
事前収録で出演した相葉くん司会の番組中に、LGBTをテーマに扱ったシャンプーのCMが流れてたな。
それ観て、智くん、考えちゃった?
「LGBT自体、定義が広いからね。
でも、智くんがLGBTなら、俺も一緒だよ。」
「…おいら、しょおちゃんにがまん、させてない?女の子を好きになったらしなくていいがまん、させてない?」
智くん、俺をじっとみつめてきた。
ああ、この濡れたような瞳も、大好きです。
そんな目でみつめられる俺は、幸せ者です!
「そうだなぁ。
…あえて言うなら、現時点で金屏風前での結婚会見が出来ないこと位、かな?」
そう言うと。
ぷっ
智くんが吹き出して。
「もう、しょおちゃ~ん」
顔をくしゃっとして、笑った。
(この笑い方も、俺の好きなやつ!)
「だってさ。
一番大好きで一番尊敬していて一番愛おしいひとと愛し合うことができている状況ってさ。
幸せ以外の何物でもないよ」
そしたら、智くん、うふふって笑って。
「…おいらもそうだよ」
あ、また"そう"って言ったぁ!
でも、ま、いっか。
「LGBTの一番の問題って、さ。
自分らしく生きれないこと、なんじゃないのかな。
環境や立場で許されなかったり、ひとの認識もまだまだだし、ね。
幸い、俺たちは。
人数は少ないけど、2人の仲は認めてもらってるし。
それでいいと、俺は思ってる。
…智くんは、どう?」
「うん。おいらも、それで十分、かな。」
そう言うと。
智くんは、俺の体に腕を回して。
きゅっと、抱き締めてくれて。
「しょおちゃん、おいらを好きになってくれて、ありがと」
う~ん。
俺が智くんを好きになることより。
智くんが俺を好きになることの方が奇跡だと思ってるけどね、俺は。
だって、智くんの方が先輩だしさ。
「こちらこそ、智くん、俺と出逢ってくれて、ありがとう。
…愛してます」
最後のは、智くんの耳元で囁いた。
すると、ぱぱぱっと、耳から顔に赤みが走って。
「もう、しょおちゃん、言い過ぎ!!
恥ずかしいだろ~!?」
俺の隣から立ち上がって、リビングを出ていこうと、…あれ、止まった。
「しょおちゃん、…しょお。言葉だけ、なのか?
世界一、宇宙一、愛してるって、わからせてくれんだろ?
…先、行ってる」
その時、智くんは。
ゆでダコのように真っ赤になってて。
そのまま、リビングを出ていった。
…はっ!
世界一、宇宙一、愛してるって、今から実地検証させてくれるの!?
「智くぅ~ん、今行くよ、すぐ行くよ~!!待ってて~!!」
寝室から
「別に待ってねぇ~よ。バカ!」
怒ってるようだけど、実は照れちゃってる智くんの声が聞こえてきた。
END