ある土曜日の夜に、突然左まぶたが痛くなり、腫れてしまった当院スタッフのT君(20才男性)。
 
眼に細菌が感染して化膿した、いわゆる「ものもらい」だ。
「めばちこ」「めいた」など様々な呼び方があるが、医学的には「麦粒腫」である。
眼を動かしたり、まばたきをしているだけで痛い。
 
 
眼科に行って抗菌点眼薬、内服薬を処方されたが、治癒までに1週間ほどかかるという。
そこで鍼灸治療をすることにした。
昔から、当院ではお灸で治していたからだ。
治療を受けた翌日、腫れが半分ほどに引き、痛みもましになった。3日目、ほとんど治った。
 
 
この麦粒腫は多くの場合、皮膚常在菌である黄色ブドウ球菌がまぶたの涙腺や脂腺に感染して起こる。
黄色ブドウ球菌は人の肌に常に存在する、感染力の低い菌で、疲労やストレスなどで抵抗力が落ちているとき、あるいは皮膚に傷があるときなどに化膿を起こすことがある。
ニキビや髭剃り後の毛包炎の原因菌にもなる。
 
治療は、患側の母指の第一関節にある「大骨空」(だいこつくう)と、示指第3関節にある、手の陽明大腸経の「二間」(じかん)に直接灸、半米粒大でそれぞれ10回(壮)、7回(壮)。
さらに指先にある井穴(商陽と中衝)に刺絡で10滴ほど血を抜く。
脈は肝虚だったので足の母趾の方にある、肝の要穴による調整も行った。
(翌日からは灸のみ)
 
左から中衝、商陽、二間、大骨空
 
大骨空へのお灸
 
患部から遠く離れた手足の経穴を使った遠隔治療で。患部の眼の近くには一切触れずに施術を行った。
眼の近くに刺されるのはちょっと・・・という方でも安心。
 
「二間」というツボは、ものもらいのほか、子供の便秘や疳の虫などにも使われる。