今回は,脳卒中片麻痺者における麻痺の影響を受けた上肢の機能的回復を目指した知覚探索アプローチの効果について論文を紹介します.
Masato Sato. “Effect of the perceptive exploration approach on upper extremity movement disorder in patients with acute stroke hemiparesis: Case series study.” Asian J Occup Ther 18: 101-194, 2022.
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知覚探索アプローチはこれまでに,ケースレポートのエビデンスレベルで報告されてきました.
本論文では,ケースシリーズ研究です.
応用歩行論文
応用歩行論文:探索活動と知覚-運動学習 | 佐藤将人(sato-reha)の脳卒中リハビリテーションコラム 和歌山 (ameblo.jp)
Activity論文
Activity論文:ボール・風船 | 佐藤将人(sato-reha)の脳卒中リハビリテーションコラム 和歌山 (ameblo.jp)
半側空間無視論文
半側空間無視の作業療法 | 佐藤将人(sato-reha)の脳卒中リハビリテーションコラム 和歌山 (ameblo.jp)
食具操作論文:口への運搬
食具操作論文:口への運搬 | 佐藤将人(sato-reha)の脳卒中リハビリテーションコラム 和歌山 (ameblo.jp)
食具操作論文:道具操作
食具操作論文(スプーン) | 佐藤将人(sato-reha)の脳卒中リハビリテーションコラム 和歌山 (ameblo.jp)
それでは,今回の論文の内容を紹介します.
Introduction
知覚探索アプローチの特徴は,知覚情報の探索と運動制御の観点から行為の組織化を促通することであり,そのアプローチは上肢の機能的使用の形成に役立つ可能性があります.
本研究の目的は,急性期脳卒中片麻痺患者に知覚探索アプローチを実施し,麻痺の影響を受けた上肢運動障害の改善に効果的であるのかどうかを明らかにすることでした.
Methods
8名の片麻痺患者は,pretest-posttestを使用して,セラピー効果を調べました.
セラピーは,標準的なOTプログラムとともに患者固有の上肢機能および姿勢制御の評価に基づいて構成された知覚探索アプローチを実行しました.
標準的なOTプログラムは,facilitation of muscle activity and coordinated multi joint movement,tactile and proprioceptive input, soft tissue mobilizationで構成されました.
知覚探索アプローチは,作業療法士のハンドリングによって触-運動覚から課題遂行に不可欠な知覚情報を抽出し,運動スキルが発揮されるように実施されました.
知覚探索アプローチにおける課題遂行で手の運動スキルは,課題を遂行するための操作機能を10項目にカテゴリー化し,患者の上肢機能の回復段階に合わせて,活動課題と使用する対象を更新させました.
手の基本的な動きに基づく運動スキルは以下のとおりです:reaching, holding, moving, releasing, throwing, pocking, stroking, scratching, wiping, varied prehension.
セラピー効果のアウトカムについては,3つの主要な結果測定値があります:Fugl-Meyer Assessment (FMA), motor activity logのmount of use (AOU)とquality of movement (QOM).
Results
セラピー前後に測定されたアウトカムデータはすべての患者において改善を示しました.
FMAにおける運動(p = 0.02, Δ=0.59)と感覚 (p = 0.01, Δ=0.55)は,有意に改善し,効果量はmoderateでした.
MALにおけるAOU (p = 0.01, Δ=0.81),QOM (p = 0.01, Δ=0.80)は有意に改善し,効果量はlargeを示しました.
急性期脳卒中片麻痺者における麻痺の影響を受けた上肢の機能的使用の回復には,知覚探索アプローチによるセラピーが有用である可能性を示唆しています.
この論文では,知覚探索アプローチが脳卒中片麻痺者の機能回復に有用であることを支えてくれるものであり,今後もエビデンスレベルを上げた臨床研究を継続していますので,また報告できるようにと考えております.
知覚探索アプローチは治療概念(コンセプト)であり,研究会においても継続して検討しています.
研究会は勉強会をZoomにておこなっております.
中枢神経麻痺研究会に興味がある方や定例勉強会へのご参加を検討している方は,ホームページもしくはFacebookからメッセージをいただけますと幸いです.
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