陽射しが心地良い季節になってきました.
桜は日本の国花であり,その美しさは報酬であることに気づかされます.
今回はデイキャンプから.
個人的にデイキャンプの魅力は,
自然環境に身を任せ,環境に親しみ,自己の体験を通じて生きていく楽しみや手段を発見できることかと思っています.
また,自然環境のなかで寝転がるといつの間にか,自我を忘れているなんてこともあります.
大の字で寝転がっていられること.
周りになにもない芝生の上で空を見上げて寝転がると,
身体をあずけている芝生の大地と視野に広がる空を基準に自己が定位されます.
しかし,空における情報量の観点からは,基準となるものがありません.
空には距離がない.
ただ,広がりがあるだけで,空は高く,遠い.
相対的な自己の位置関係が明確な輪郭として自己を特定するように現れるわけでもありません.
それがある意味では,空想にふけったり,自側を忘れてぼんやりと時間の流れに身を任せられるのかもしれません.
それでは,自己の姿勢制御の観点では何を基準にしているのか.
基準となる知覚情報は,大地から受ける反力である体性感覚情報が挙げられます.
自己を支えてくれている芝生の大地が自重を受け止め,寝転がっていられるための情報を提供してくれています.
人は動物ですから静止していません.
寝転がっていても,居心地が良い方向に身体は反応しています.
芝生のふかふかなクッションや凹凸のある大地の環境に合わせて,身体を変形させています.
内骨格動物としての身体の変形です.
ですから,大地から受ける反力に対して身体は適合するために探索し,探索によって変化する反力に基づいて体性感覚系が姿勢制御に活かされるということです.
また,大地に接触する面は体幹で広く,身体反応の主役となります.
体幹には,機能的に変形と流動が寝転がるために求められる要素です.
変形とは,大地の環境に合わせて接触する皮膚面から身体内部の変化を指します.
例えば,仰向けから横向きに寝転がると,大地に接する側の体側面は広がりを持つといった変化です.
流動とは,骨格に内蔵がおさめられていますから,寝転がっていく方向と重力に合わせて腹腔を維持する内圧が流動的に変化します.
そのため,大の字で寝転がるということは,
体性感覚系に依存した固有受容感覚コントロールによる姿勢制御といえます.
つまり,大地との関係は,重力とそれに対する反力変化の相互依存関係にあるということです.
また,大の字で手足を自由にさせておける,いつでも寝返りをうてるといった状態が寝ていられるということになります.
逆にうつぶせをとると,視覚情報が変化します.
今度は視野が大地に迫り,大地の延長と地平線に自己が包まれることになります.
そういう意味では,仰向けとは違い,内的な自己に向かいやすい印象を持ちます.
大地には,密な肌理をもつ地平が広がります.
その肌理は,自己に近づくにつれて連続的に粗くなり,自己を支えてくれている支持面で最大に拡大します.
この拡大は,自己と面が近いことを特定する情報を提供してくれています.
肌理の拡大率の変化は,
自己の眼の高さ,大地が見える角度によって決定付けられ,遠近や高低差を知覚する情報源です.
このように視覚情報は,仰向けで寝ている状態から動き出すための手がかりを与えてくれるものとなります.
それは,自己の特定と同時に自己の移動を特定する情報群になりうるということです.
片麻痺者の場合,
仰向けで寝ると,身体がのけ反るように突っ張ってしまうことがよく見受けられます.
つまり,体幹の広い面で大地に身をあずけられず,身体のかたいところ(後頭部,胸椎凸部,仙骨,肘,踵)で床面を押しつけていることがほとんどです.
また,ベッドで寝ている際には,ベッドの端や柵にしがみついていることもあります.
このように身体は寝ているような姿に見えても,身体では窮屈で緊張した状態にあるということを踏まえなければなりません.
対策としては,いかに体性感覚系に依存できるかがポイントとなります.
大地から受ける反力を自己に取り込み,自重をその大地にあずけていくかかわりです.
基本的には,大地となる床面を探索対象とし,今ある接触面を拡げていくように探索的な反応を求めていきます.
仰向けで大の字をとり,寝転がっていけるということは,そのような意味で大地から受ける反力を姿勢制御に活かし,
寝返ったり,起き上がって次の行動に移すためのアクションは視覚情報とリンクさせるという条件が必要です.
寝ている姿勢は,静的な姿勢保持として捉えるのではなく,
大地との相互関係に関する知覚情報を抽出するために動的な姿勢転換の過程が,体性感覚系に変化をもたらすものと考えます.
具体的な治療ポイントと援助工夫としての対策は,
和歌山中枢神経麻痺研究会で検討していきます.
本日も読んでいただき,ありがとうございました.
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