春夫詩句を拾う!!(13)
坊(ぼう)やがお風呂(ふろ)を出て来たぞ。真(ま)つ赤(か)な頬(ほ)つぺで出て来たぞ。りんごのお化(ばけ)が出て来たぞ。(一九三七年七月「りんごのお化(ばけ)」・『東天紅』(とうてんこう)所収))一九四九(昭和二四)年一二月に『りんごのお化』が刊行され、「私の 父が狸と格闘をした話」「私の父と父の鶴との話」「実(みのる)さんの胡弓(こきゅう)」「正夫君の見た夢」などを収録。春夫の童話は八十余あるが(全集刊行後も発見)、「正夫君の見た夢」の正夫君とは、春夫と千代の間に一九三二年に生まれた方哉(まさや)のこと。頭を洗うのを嫌がる方哉は、五歳の頃。この作品には「これは、頭を洗うことを嫌がる子供が我慢して頭を洗ってでてきたのを、父が歌いはやしほめたたえたもの」という前書きがある。風呂上がりの幼児の風体(ふうてい)を「りんごのお化け」と喩(たと)えたユーモアは抜群。バスタオルで覆(おお)って抱きとめられる姿が眼前に浮かぶが、春夫はただただ観察するだけだったか。春夫の『環境』という小説も、方哉を扱ったものだが、その本の裏表紙に「方哉は日本一のせがれなり」と記す春夫だった。