春夫詩句を拾う!!(11)
孤蝶(こてふ)、秋骨(しうこつ)、はた薫(かをる)荷風(かふう)が顔を見ることがやがて我等をはげましてよき教(をしへ)ともなりしのみ(一九二八年一月「酒、歌、煙草、また女」『佐藤春夫詩集』所収)春夫は夜型の生活で、ほとんど学校に通わなかったというが、時に学園内を 闊歩(かっぽ)していると、その態度、風采(ふうさい)から、先生と間違えて、頭を下げ礼をして行き過ぎる学生もいたという証言もある。この詩句のあとには、「新しき世の星なりと / おもひ傲(おご)れるわれなりき」ともある。慶応義塾の大学部は、一八九〇年、文学科、理財科、法律科の三科でスタートしているが、一九一〇年二月、新しくフランス文学を学んできた永井荷風(ながいかふう)を教授に迎えることによって、文学部の刷新を計る。馬場孤蝶(ばばこちょう・英文学)、戸川秋骨(とがわしゅうこつ・英文学)、小山内薫(おさないかおる・劇作家)は、いずれも教授陣。戸川秋骨には、熊野旅行を含む『自然、気まぐれ紀行』がある。春夫と師荷風との関係は、戦後、荷風の奇行とも相まって、様々な波紋を呼ぶ。