「月刊ミュージカル」誌で年末になると発表される、

ミュージカル・ベストテンにランキングされるには、

「その年に日本で初めて上演される日本語によるミュージカルであること」

という条件があったように思う。

この条件がつくと、該当する作品がかなり限られてくるので、

ベストワンを予想するのはあまり難しくないが、

この作品は確実に上位に食い込んでくると思う。



いくつか気になる点はあるものの、全体的な仕上がりはかなり良い。

これはひとえに主演・安蘭けいさんの好演による所が大きい。


この、無声映画(もちろんモノクロ)時代のスターで、

今は忘れられた大女優・ノーマは、

オリジナルキャスト(ロンドン)がパティ・ルポン、

ブロードウェイキャストはグレン・クローズ(しかもトニー賞受賞!)

という大役なので、

もし日本版が上演されるなら

麻美れいさんか鳳蘭さんになるだろうな、と思っていた。



ロンドン初演当時、ロイド=ウェバー作品をほぼ独占していた劇団四季では

演出家の浅利氏が「今は丁度いい年齢の女優がいない。

志村幸美がその年代を迎えたら主演でやりたい」と公言していたものの

当の志村さんが故人となってしまったため

四季ファンにとっては「幻の名作」だった。



今回、20年近い歳月を経てようやく日本初演が決まって喜んだものの、

ノーマ役が設定より相当若い安蘭さんだったので

正直、あまり期待していなかった。

が!

安蘭ノーマ、すごく良い!!


変に老けメイクはせず、

ドスのきいた声とよろけるような身体の動きで年齢を表現。

老けた演技に若い顔がのることで

周りから見たノーマは十分おばあちゃんなのに

本人の自己イメージは若い時のままだという事がわかる。

「昔は美しかった」と言われれば言われるほど

そのギャップの大きさが際立って、泣ける。



物語の鍵を握る脚本家・ジョー役の田代万里生くんが

お上品過ぎたり(もっとやさぐれ感が欲しい)

ジョーと恋仲になるベティ役の彩吹真央さんが

22才に見えなくて残念とか

多少問題点はあったけれど

この作品の肝はノーマのスター性と狂気にあるので

その点では大成功だと言える。

客席は満員御礼とはいかなかったようだけど

キャスティング等を練り上げた上で

(もちろん安蘭ノーマで)

是非とも再演して欲しい。