今年最初の観劇にして、今年最高の一本が出てしまった❕

そんな嬉しい悲鳴をあげたくなる、実に完成度の高い『ミュージカル』観賞体験だった。

主演二人の歌唱力の高さには定評があったので、ある程度のクオリティは想定していたが、そのはるか上をゆく、雪組の総合力の結晶。

四季を含め、近年観たミュージカルでこれほどまで高い満足感を覚えた作品はないように思う。

これまでアーサー・コピット版のファントムは前回の花組版、城田優主演版と二回見ているが、大して印象に残らなかったというのが正直な感想で、四季が上演しているロイド=ウェーバー版というエバーグリーンがあるのに、何で同じテーマでパッとしないミュージカルを創ったのか?という疑問があった。

が、これは大きな間違いで、適切なキャストで上演すればロイド=ウェーバー版(略:四季版)に充分対抗出来る、否、挑むつもりで創られた作品なのだと気がついた。

歌唱場面がある主要キャストが少ない分、全員が実力者でなければこのスコアは生きて来ない。
今回の雪組版は磐石のトップコンビに加え、ベテラン娘役達がガッチリ脇を固めていたのが成功の要因と見た。

特にカルロッタ役のヒメちゃんは、四季版を含め史上最高カルロッタ❗
敵役でありながらチャーミングでなおかつコメディ・リリーフでもある複雑な役を見事に魅せてくれた。
(いつか、彼女のマダム・テナルディエが見たいなー!と余計な妄想までしてしまったほど)

今日の役代わりはラウルがあーさ、アラン・ショレが翔くん。

きっとどちらで観ても美しいラウルだと思うけど、今回はのあーさラウルは実にチャラい感じが良かった(笑)

翔くんも、美貌を髭で隠し、最近すっかり得意分野になるつつある三枚目役を楽しんでる様子。

今や立派な二番手の咲ちゃんがキャリエール役でしっかり「お父さん」として存在してた事も含め、雪ん子達の成長が感じられたのも嬉しかった。

今回、セットや衣装などの美術が「大丈夫?ハロルド・プリンスから訴えられない?」
と心配になるほど四季版に寄せて来ているのも作品の格調を上げるのに一役買っていて面白かった。
特に地下湖に広がる星空のようなろうそくや、眠るクリスティーヌを乗せて進むボートなど、驚くほど似ている造形で、四季版を観た事がある人なら「ああ、あれね」と思い出してしまう。
カルロッタを誘拐したファントムが着ていた赤いコートもしかり。
だいもんは半顔のマスクなのに、フルフェイスの骸骨マスクを思い浮かべてしまった。

その分四季版にはない地下の「森」の場面だけ突如としていつもの書き割りクオリティになってしまったのは残念。
ここでオリジナリティ溢れる素晴らしい美術を見せてくれたら「四季版を超えた出来」になったのに…。

とは言え、歌だけでなく、芝居もしっかり出来上がった今作は、最終的にエリック=ファントムの哀しみにも胸を打たれ、涙なくしては観られなかった。

四季版でも、初演の市村正親ファントムでは泣けたけれど、その後演技力より歌唱力重視のキャスティングになってしまい、私の中では「感心はすれど感動的はしない作品」にいつの間にか分類されていた。

望海風斗という得難い俳優を得て、この雪組版『ファントム』は日本ミュージカル史に残る素晴らしい仕上がりになったと思う。

機会があればもう一度観たいけど、このチケット難。恐らくDVDでの再開になると思う。

観劇日:1/6(土)ソワレ





思い返せば、私の宝塚初体験はマミさん(真琴つばさ)トニーの月組版ウエストサイド(以下WSS)であった。
当時、ゴリゴリの四季ファンだった私としては、かなり懐疑的な姿勢で観に行った。
実際観てみると、下町の貧しいチンピラ達の物語にしてはキラキラしたスタジャンを着ていたり、通りひとつの縄張り争いをするにしてはジェッツもシャークもかなりの大人数なチーム編成だったりとツッコミ所はあれど、登場人物が若々しく、未成年者の物語である事を思い出させてくれ、なかなかの仕上りだった事をよく覚えている。


さて、今回は真風涼帆氏トップ御披露目公演であり、ヅカとしては20年ぶりの上演。新トップへの期待の高さが分かろうというもの。

結論から言うと、かなり良かった。
大劇場公演ではないため、人数も適正だったし、配役も適切。

特に真風氏のトニーは難曲『something  coming』『マリア』もきちんと歌いこなしていたし、何よりルックスが良い。
「トニーがいなきゃこの決闘は勝てない」という台詞に相応しい、ちゃんと喧嘩強そうな高身長トニーは、実に山口祐一郎氏以来か。

巷でも評判の和希そら君のアニタ。
難しい役だけに実力者が配されるのが通例の為、ダメだった例を観たことはないが、私個人のオールタイムベストは山田千春さん(ヅカ出身)のアニタなのだが、そら君はアニタはルックスも含めかなり近いものがあり、嬉しい驚きだった。

次に目を引いたのが桜木みなと君のリフ。『COOL』等彼が中心になる重要な場面をしっかりこなしていたのにももちろん感心したが、トニーと並んだ時の若々しさが実にピッタリ来るのだ。ジェッツを卒業=大人になりつつあるトニーと、ジェッツを守ろう=子供のままのリフという構図が鮮明で、物語に深みを与えていた。

今回のヅカ版で驚いたのは、決闘前の高架下に忍び込む際の「フェンス超え」があったこと。WSSの中でも密かに楽しみな場面なのだか、月組版には無かったし、近年の四季版でもカットされて残念だったのでこの復活はとても嬉しかった。

ベルナルド、リフという主要キャストが一幕で去る事もあり、下級生や娘達もそれぞれの見せ場をきっちり、機を逃がさず頑張っているのも観ていて実に気持ちが良かった。

惜しむらくは訳詞がイマイチだったこと。岩谷先生の名訳をあえて使わないのであれば、もう少し時間や手間をかけても良かったように思う。字余りだったり(マリア)品位に欠ける表現(五十唱)があるとそこで集中が途切れてしまう。

ともあれこの作品で正統派の王子役者であることを改めて知らしめた新トップと、実力を証明した組子達が今後どんな世界を見せてくれるか、実に楽しみである。

観劇日:2018年1月14日(日)マチネ



巷では、雪組るろ剣が驚異のビジュアル再現率として話題になっておりますが、
こちら理事こと轟悠さまのリンカーンも相当なモノだと思う。
(だってリンカーンだよ⁉実在の人物だよ⁉改めて言うのも変だけど米国人でしかも男性だよ⁉)

南北戦争の話を中心に、リンカーンの生涯をがっちり描いた骨太な歴史ミュージカル。

理事が組に来て主演をすると、若手のチャンスが一枠減るので異論はあるが、
今回花組でこの芝居をやったのはすごく良い結果を産んだと思う。

意中の女性を上手に誘えない初々しい青年時代から、同じ国民同士で戦争する大統領の苦悩、
そしてタイトルにもなっている「人民の、人民による~」の有名な演説における説得力。
轟悠という役者の振り幅とスケール感を現すのにぴったりの役だし、そこにガッチリ組んで芝居をする事で組全体のレベルも一段上がったように見えた。

特に今回は恋敵で政敵のスティーブン役のあきら君(瀬戸かずや)が良かった
理事と同世代のライバル役は、並んで立った時にそれらしく見える事も重大要件なので、この時点でかなりの難役と言えるが、そこをサラッとクリア。政治的に対立して主人公にダメージを与え、さらには全てを呑み込んだ上で協力を申し出る、人間的に大きくて複雑な人物に説得力があった。

この芝居の2番手枠はカレー君(柚香光)だと思われるが、元奴隷の活動家役なので、
シャネルズ(古っ!!)もびっくりの黒塗りだったんだけど
隠しきれない美貌とスターオーラが凄くてちょっと笑ってしまった。

一番得してる!と思ったのはマイティー(水美舞斗)。
リンカーンの助手役なので目立った活躍の場面は少ないものの、黒髪の主演、黒塗りの2番…とビジュアルが地味な中、明るい金髪が映えること!
難しい話の中で彼が出てくるとキラキラでホッとする。
(以外ネタバレ↓)


南北戦争に従軍し、敵の銃弾に倒れるマイティー。
しかし!
この場面、岡幸二郎氏のアンジョルラスを彷彿とさせる華麗な死に様❗
もう、この場面だけでチケ代の元取れた!と思わせる、近年稀に見る美しい死に方だった。

もう1人注目はリンカーンの息子役の亜蓮冬馬くん!
まだ全体のフォルムが丸くて女の子みたいなんだけど親に反発する10代の感じが良く出てたし、芝居も上手。
ついつい目の行くいい笑顔なんだけど、誰かに似ている…王子…ハッ!
東宝エリザでルドルフをやっていた頃の浦井健治くんにそっくり‼
思わず「花組 浦井」で検索かけてしまったほど。…が、ヒットせず。→当たり前(-_-;)

以上、今後の花組観劇時のモチベーションが上がりそうな収穫もあり、全体的には悪くない出来だった、と思う。
しかし!
もう少し脚本が練れていれば傑作と呼ばれる作品になったはずなので、惜しい‼

ひとつはリンカーンの奴隷解放にかける情熱の源になるエピソードが無く、肝心の主人公にイマイチ感情移入できず、
結果マンガで読む偉人伝みたいなお勉強感が強く漂ってしまったこと。

もうひとつは、せっかくマイティーの死の場面を感動的に見せたのに、そのすぐ後に同じように舞台中央であきら君を死なせたこと。
「え?何?デジャ・ビュ?
マイティーのために流した涙も引っ込んだよ!?」
と心の中で叫んだのは私だけではないはず。

史実に基づく歴史ものって皆が知ってることだと話を盛れないし
特にスターを生かさなきゃいけない宝塚ではなかなかの挑戦だとは思うけど
四季の『ミュージカル李香蘭』みたいに
硬いテーマだからこそ呼べる客層もいるし、直しつつ上演を続けることで育つものもあると思うので
この『リンカーン』も時間をかけて名作に育てて欲しいと思う。

観劇日 3月8日(火)ソワレ