恋愛がうまくいかないと相談したとき、たいてい返ってくる言葉のひとつに「自信を持て」というのがある。私も婚活をしていたころ、恋愛コンサルだか何だかに似たようなことを何度か言われていて、自信なさげに見えるのがよくない、もっと堂々としていろ、と。まあ言いたいことはわかるのだけど、自信なんてそう簡単に出したり引っ込めたりできるものでもないよなあ、と当時はわりと白けた気持ちで聞いていた。

最近マーティ・ヘイゼルトンの『女性ホルモンは賢い』という本を読んでいて、この「自信」をめぐる話で、ちょっとおもしろい見方に出会った。

この本によると、女性が妊娠できるのは一か月のうち二、三日ほどしかないらしくて、その排卵が近づく数日のあいだには、エストロゲンというホルモンのレベルが上がっていって、女性の行動や感じ方がけっこうはっきり変わるのだという。著者たちの研究では、この妊娠可能性が高い時期の女性は、外を出歩く時間が増え、人づきあいに出かけることが多くなり、いつもより多くの男性と会い、社交的に、積極的になる傾向が見られたそうだ。

おもしろいのは、自分の魅力に対する感じ方まで変わる、というところで、研究で「ほかの女性と比べて自分は男性にとってどれくらい魅力的だと思うか」と尋ねると、妊娠可能性の高い日の女性は、自分を他の女性よりセクシーで望ましいと評価する傾向があったらしい。要するに、パートナー探しで成功できるという自信が、その数日間には自然と高まっていた、ということになる。しかも著者によれば、これは本人がそう感じているだけではなく、客観的に見ても実際にいつもより魅力的に見える、というデータまであるそうだ。

なるほどなあ、と思ったのは、ふだん私たちが「自信を持て」と気軽に言うときの「自信」は、本人の心がけや努力だけで出てくるものだと思われがちなのに、少なくともその一部は、月の周期のなかで勝手に満ちたり引いたりしているらしい、という点だ。だとすれば、「今日はなんだか自信が出ない」という日があっても、それは性格の弱さでもなんでもなく、ただ潮が引いているだけ、ということもあるのかもしれなくて、そう考えると、ずいぶん気が楽になる話でもある。

この本のタイトルが「女性ホルモンは賢い」なのも、たぶんそういうことなのだろうと思う。女はホルモンに振り回されている、感情的で当てにならない、みたいな昔ながらの見方ではなくて、子孫を残すという厄介な仕事のために、自信も、魅力も、社交性も、いちばん必要なタイミングに合わせて自動で調整してくれる、よくできた仕組みなのだ、と。言いなりになっているのではなく、賢く後押しされている、という捉え方で、これはこれで、ずいぶん見晴らしのいい話だなと思った。

男の私が読んでも、なかなか考えさせられる本だった。婚活で「自信を持て」と言われて空回りしていたのも、たぶん自信というものを、意志の力だけでどうにかしようとしていたからかもしれない。出るときには出るし、引くときには引く、波のあるものとして付き合ったほうが、結局は楽だし、たぶんうまくもいく。まあ、男の自信に月二日の無敵タイムはないけれど、波があること自体は同じなのだろうと思って、あまり気負わずにやっていきたいなと思っている。