僕はおじいさんを探している間に迷子になった。山から少し降りたところなのだろうが周りに背の高い木が多くてどこにいるのかわからない。とりあえずテントに戻るために山を登り始めた。少し歩くと前には日本軍の人が何人かが血を流して倒れていた。僕は驚いたがすぐに気持ちを冷静にさせて生きているかどうかの確認をし始めた。確認したがみな息がなく死んでいた。なかには村里さんと佐藤さんがいた。僕は正直佐藤さんのことをよく知らない。突然佐藤さんはなにものなのか気になり佐藤さんのポケットのなかにあった財布を取り出した。財布の中にはカードが多くあり日本軍であるという証拠のカードもあったが、ロシア軍であるという証拠のカードもあった。しかし、ロシア軍のカードの方は期限が五年前のものであった。佐藤さんは元々ロシア軍の人間だったとここでやっと理解した。僕はそのカードを持つと涙をこらえながらテントへ向かって歩いた。
 その時はもう空は暗く、星が多く出ていた。




真野 まさき 作






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僕は山の頂上に上り詰めたあと村を見ながら佐藤さんが来るのを待ち始めてからまる三日が経とうとしていた。パン一切れは最初に頂上に来た時に食べてしまいここ二日何も食べていない。そして村は時と共に赤く染まった。それがどちらの血なのかはわからなかった。
 ここ三日ひとりぼっちだ。僕は決めていた。明日までに佐藤さんがこなかったらここを出発しようと・・・

 午前四時半、銃声はしなくなった。戦いが終わった。僕はすごくホッとして寝てしまった・・・
 
 時の流れは早い。僕が起きると僕はテントの中にいた。隣には山に登る途中で助けた外国人がいた。僕はここで捕まったと確信した。
「おぉ、君起きたかね。」
と声をかけてくる。
「はい。」
と僕。
「君はロシア軍に捕まったんだよ。」
「わかってます。ところでなぜ日本語を?」
「わしは昔日本に留学しておったから日本語が使えるのだよ。」
「へぇ~」
その会話を終わらせると外国人のおじいさんは「ここにいなさい。」と言ってテントから出ていった。ふとカレンダーを見ると頂上にいた時から五日もたっていた。時の流れは恐ろしいものだと分かった僕は時間を無駄にしないで生きようと思い、テントを出ておじいさんを探し始めた。

真野 まさき 作

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僕の仕事はその村では畑仕事となった。大根や人参などを育てる仕事だった。
 それとこの村は安全らしい。僕を連れてきた佐藤さんは、
「ここにはね。海軍、陸軍、空軍は、来ないから安全だよ。」
と言っていた。
 安全なのを知ったからって変わることのない毎日。ただ場所が変わっただけの生活なのに苦しい。苦しくても僕はとりあえず毎日畑仕事をした。

 2237年、あのときから一年たった今。親の行方は分からずに僕は村で畑仕事をしていた。
 僕は大人の人ばかりだが知り合いが増えた。僕が畑仕事をしているとみなが声をかけてくれる。
 午後二時、いつものように畑仕事をしていた僕のところへ一人の男の人が駆け寄ってきて
「この時期は何が取れるんだい?」
と聞いてきた。こないだ知り合った村里さんだ。
「わかりません。僕、この仕事まだ一年目なんですから。」
と僕。
「そうか。わからねぇか。」
悲しそうに言い出した村里さん。
「何か必要でしたか?」
「いやぁ。あのな。うちでも畑やろうと思って何を植えてよいかわからんので聞きに来たんや。」
「それなら適当に種でもあげましょうか?」
そう言うと僕は人参と大根の種を差し出した。村里さんはそれをもらい「ありがとよ。」と言って帰った。
 それから十分後だっただろうかいきなり銃声が聞こえた。その音と共に銃を持って家から出てくる日本軍の人たち。
「雄平早く来いっ!」
僕は佐藤さんにそう言われて家に戻っていた。家に戻るとさっきまで普通の格好をしていた佐藤さんが武装していた。
「雄平これを持って北側の山の頂上へ逃げろ!」
と佐藤さんは言いながら僕に長い銃、短い銃、パン二切れ、ナイフを渡した。
「早く逃げろよ!」
と言って佐藤さんは家を出ていった。
 外では銃撃戦が行われているのか銃声が鳴り響く。そのなか僕は北側の山に向かって走っていった。
 あれからどのぐらい登ったのだろう。僕は山を登っていた。すると草がゆれていた。僕は怖くてたまらなかったがその草の方へ向かった。そこにはなんと外国人一人が武装をしていたが足を怪我していた。外国人の足からは真っ赤な血がドロドロと出ていた。僕は一回「動くなっ!」と言いながら銃を向けたが僕はその外国人を撃てなく、そこにパン一切れを置いてまた山を登り始めた。
 外国人を撃てなかった自分が情けないと思う自分もいたがこれでよかったと思う自分もいた。そんなことを考えているうちに山の頂上についた。山の頂上は木や草が少なく見晴らしが良かった。僕は上を見上げた。
 空は雲ひとつない青空だったがここから見るさっきまでいた村は少しだけ赤く染まっていた。


真野 まさき 作



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