285 某国の水面
車を走らせていると左手に池が見えてくる。
それはいたって日常の風景ではあるのだが
ときにそこはそこだけどこか異国の
あるいは東山魁夷が描く冷たい月夜輝く絵の中の
湖をみているかのような気になってくる。
通り過ぎる一瞬の左目にその景色は強く焼きついて
某国の水面へいざなう。
斜面の針葉樹林に雪を蓄えて
水面に幾筋かの線をひくのは水鳥。
現世と離れた速度で時の砂が落ちれば
ふいに木々の雪片がひんやりとした風に舞い
湖面へおりる。
揺れる水に一瞬、白馬があらわれ
そして奥のしげみへ消えていった。