(香港の若者)

〔前文〕

6月から続くデモに業を煮やした中国政府は、香港政府の責任者、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の更迭を検討中といわれる。

・しかし、責任者をすげ替えたり、あるいは軍事介入でデモを叩き潰したりしても、香港の若者たちの将来への幻滅が続く限り、抗議の芽がなくなることはない。

 

〔全文〕

【失業リスクに直面】

・香港デモに関して、多くの論説は「自由や民主主義を求める香港市民vs独裁的な中国共産党」という構図にフォーカスしている。

・実際、デモ隊が掲げる要求は、逮捕されたデモ参加者の釈放、警察の不当な取り締まりに関する独立した調査委員会の設置、自由かつ公正な選挙など、政治的なものばかりだ。

 

・しかし、フランス革命以来の多くの政治変動では、自由や民主主義といった大義だけでなく、生活苦への不満もまた大きなエネルギーになってきた。

・香港デモの場合も、根本的な背景として若者の貧困と幻滅がある。

 

・香港にある嶺南大学のサムソン・ユアン博士の調査によると、今回のデモ参加者の多くが20歳代で、そのほとんどが大卒程度の学歴をもつか在学中だ。

 

・ビジネス都市の香港では金融やコンサルティングなど高度に知識集約型の産業が発達しているため、いい就職のために教育熱心な家庭が多い。

・その結果、世界銀行の統計によると、高等教育への進学率は約77%にのぼる。

 

・ところが、やはり世界銀行の統計によると、2017年の若年失業率は8.7%で、日本(4.6%)を大きく上回る。

・ちなみに香港の全世代を通じた失業率は3.9%にとどまり、年長者に比べて若者が失業するリスクの高さがうかがえる。

 

【世界中の優秀な人材が職を奪う】

・デモに参加するより真面目に勉強すればいいのに、仕事を探せばいいのに、という見方もあるかもしれない。

・しかし、香港には金融などモビリティの高い分野を中心に、世界中から優秀な人材、経験豊富な人材が集まってくる。

・英語がビジネス用語として普及していることは、その一因だ。

・そんな競争の激しい社会では、日本と違って、新卒であることが大きなアドバンテージにならない。

・その結果、高学歴化した若者を十分に吸収する雇用はない。

 

・厳しい競争からこぼれ落ちれば、若者に復帰のチャンスはほとんどない。

・世界銀行によると、2016年段階で若者に占めるニートの割合は約6.1%にのぼる。

(日本は3.5%

 

・英 BBCのインタビューに答えた20歳の大学生は「いい仕事につくために大学に入ったのに、今の香港には希望がもてない」とデモ参加の理由を語っている。

 

【世界屈指の格差社会】

〔好景気のワナ〕

・こうした若者の窮状に拍車をかけているのが、行きすぎた景気の良さだ。

 

1997年にイギリスから中国に返還された後、香港には中国本土から投資や観光客が流入し、さらに本土との取引が活発になったことで、それまで以上に好景気に沸いた。

 

・しかし、好景気は必然的に物価上昇をもたらす。

 

・今の世界を見渡すと、伸びしろのある開発途上国ほどインフレが進みやすく、経済が成熟し、爆発的な成長が見込めない先進国ほど物価上昇のペースは鈍い。

 

・ところが、香港はこの一般的なパターンが当てはまらない。

 

・平均所得や生活水準などで香港は先進国並みといってよい。

・ところが、世界銀行の統計によると、2018年の香港のインフレ率は2.4%で、日本(0.9%)や韓国(1.4%)だけでなく、中国本土(2.1%)をも上回った。

・これはもはや開発途上国の水準に近い。

 

・インフレは実質所得を抑える効果があるが、若者は年長者より所得水準が低く、もともと物価が高いうえにインフレが進む香港では、若者の購買力が極端に低くなっても不思議ではない。

 

・そのうえ、グローバルな成功者がひしめく香港は、世界屈指の格差社会でもある。

・香港当局の統計によると、返還前の1986年に約0.45だったジニ係数は、2016年には0.55にまで迫った。

・中国本土やアメリカをもしのぐ水準だ。

 

・こうして、表面的には景気のいい香港は、それについていけない人々、とりわけ実質所得を低く抑えられた若者にとって生きにくい場所になっているのだ。

 

【中国は希望を示せ】

・こうした状況は、返還後の経済成長で得たものも多い40歳代以上の年長者にとっては、差し引きゼロと割り切ることもできる。

・しかし、返還によってこれまでいい思いをしていない若い世代には、不満や将来への不安だけが残りやすい。

 

・こうしてマグマのように溜まった不満が犯罪者引き渡し条例の審議をきっかけに爆発したのが、今回のデモとみてよい。

・そこには、デモを静観する年長者たちへの反発もあるといえるだろう。

 

・だとすると、抗議活動の引き金になった条例案を香港当局が撤回した後もデモが収束しないことは不思議ではない。

・また、力ずくで鎮圧されたとしても、不満が地下水のようにとどまる公算は高い。

 

・言い換えると、香港の若者が将来の展望を描けるようにならなければ、抗議活動の芽がなくなることはない。

・中国政府に試されているのは、軍事介入の有無よりむしろ、若者に希望をもたせることができるかどうかだといえるだろう。

 

【感想】

・強いてもっと言えば何故本土は好況に沸いているのに香港は現在の状況なのか?と思います。

・個人的にはその根本的な原因には香港の人達が本土と台湾に足しての優越感が問題だと思います。

・その優越感のために本土で就職することへのためらいもあり従って現状に対しての怒りとなったのではないでしょうか?

・面白い事に幼児の頃からガリガリの共産党教育を受けた若者世代がデモの中心になっていることです。

・中国共産党はこの世代は大丈夫と思っていたフシが有ります。

・ところが世の中はネット社会になっている事を既存の人々は甘く見ている。

・日本でも昔なら新聞やメディアに誘導されたものだが今やもっと深く調べられ多彩な意見にも耳を傾けメディアに誘導される事は少なくなって来ている。

・高学歴の多い香港は特にネットをハイレベルで使っている気がします。

・特に香港は部屋が狭すぎるのに家賃が高すぎるので、この地で生きていくには最初からいい給料の会社に行くしか、後は実家に残るしかない。

・高学歴でも新卒一括採用的な文化がないと結局どこにも行けなくなるのは辛いですね。

・英語が使えるのであれば職業によってはいきなり、海外に行く手もありますが・・・。

・全部の分野ではできないので厳しいと思います。

・結局、大学行かずにまずは安い給料でいいので職歴を重ねつつ同時に通信制大学、大学院で学歴ゲットし、あとで給料高い国の就労ビザゲットするのが世界共通の年収アップ&特定国の不景気攻略法な気がしますが・・・。

・香港の一番の問題は、マンション価格の高騰にある。

30平米の相場は約1億円。

・弁護士や医者などの高所得者でさえ買えないのに、若い世代にとってマイホームなんか夢のような存在で、生涯をかけても手が届かないものです。

 

20191029

 

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