無子高齢化

【深刻なロスジェネ「2040年問題」】

2020年には東京五輪、2025年には大阪万博が予定されている。

・そして、2025年は別の問題が始まる年でもある。

・「別の問題」とは、2025年には高齢化率が30%に達し、団塊の世代が全員75歳以上、つまり後期高齢者になるということだ。

・後期高齢者と前期高齢者(65歳以上75歳未満)の違いは大きい。

・年齢を重ねることでどうしても体が衰えてくるし、医療や介護の必要性も増す。

・既に、2025年には介護福祉士が全国で約38万人不足すると推計されている。

・だが、ほんとうに深刻な事態はその後にやってくる。

2025年からさらに15年後の2040年、いよいよ高齢化社会の第2幕が始まる。

・団塊ジュニアが全員高齢者の仲間入りをするのだ。

・そのとき、高齢化率は35%となり、現役人口(2064)1.4人で1人の高齢者を支えなければならない。

 

〔では、なぜ2025年より2040年の方が「さらに深刻」なのだろうか。〕

・人間は同じように年を取って高齢者になるわけだが、親である団塊の世代とその子に当たる団塊ジュニア世代には、大きく異なっている点が2つある。

・第1は未婚率、第2は安定した雇用につけたかどうか、である。

(団塊の世代と団塊ジュニア世代の各年齢時の未婚率を見てみよう(1)。)

・男性の4044歳時点で、団塊世代の未婚率はわずか11.8%だが、団塊ジュニアは30%である。

・これは女性も同じで、4044歳時点の未婚率は団塊世代の5.8%に対し、団塊ジュニアでは19.3%になっている。

・つまり、団塊ジュニアは、親世代に比べて単身で高齢者になる人が多いということだ。

・次に大きな違いが雇用状況である。

・団塊ジュニアの大学卒業時はバブル崩壊後の就職氷河期であり、その後失われた20年、いや30年の中で職業人生を送ってきた。

・非正規雇用の人も多い上に、正規雇用であっても他の世代に比べて収入が低い。

・つまり、団塊ジュニアが高齢者になる2040年には、単身で年金も不十分な高齢者が増えるということである。

・そして、その後はロスジェネといわれる世代が続々と高齢期を迎えることになる。

 

・非正規だった場合の老後の保障は国民年金だが、40年間保険料を納め続けても、もらえる額は月約65000円である(2019年時点)

・はたして非正規で収入が不安定な人が、40年間保険料を納め続けられるだろうか。

・そう考えると、実際の年金給付額はもっと少なくなる可能性がある。 

・そもそも年金は、それだけで老後を支えることは想定されていない。

・現役時代にある程度の貯蓄をして、その蓄えと年金を合わせて暮らすように考えられているのだが、非正規では十分な貯蓄も難しいだろう。

・多くが結婚し、正規雇用で働き続け、恵まれた年金を受給している現在の高齢者に比べて、ずっと厳しい状況にある高齢者が一気に増加するのが2040年なのである。

 

【女性の非正規・無業問題をどうする】

・今年になって、政府が就職氷河期世代の正社員を30万人増やすと言い出した背景には、こうした厳しい現実が横たわっている。

・今からでも正社員になって10年でも働けば、厚生年金の加算がついて老後の年金保障も手厚くなる、という目算だ。

・政府が主なターゲットとしている雇用先は、深刻な人手不足に陥っている建築や運輸業界だが、実際に企業が雇うのは30代後半までで、40代の正社員登用には壁があるのではないかと言われている。

・それでは、正規雇用への登用や安定した職の確保の対象には、団塊ジュニア、就職氷河期世代の女性は含まれているのだろうか。

・非正規が多い就職氷河期世代だが、そもそも男性よりはるかに女性の方が非正規雇用者比率も高い。

 

・女性の非正規労働者といえば主婦のパートと考えがちだが、実際には4044歳の未婚女性のうち働いている人の約34%、4549歳では約35%が非正規である。

(同年代の未婚男性の非正規割合は約2割である。『就業構造基本調査』(2017)より)

・未婚者が増えている中で、非正規雇用の未婚女性は40代前半で約25万人、40代後半で約21万人いる。

・彼女たちはこのまま非正規で働き続けるのだろうか。

・いつか正規雇用者になることはできるだろうか。

・さらに、未婚女性には無業者も一定割合存在する。同じく「就業構造基本調査」からみると、未婚女性の無業割合は40代前半で約16%、後半で約19%である。

(実は未婚の男性の無業率も女性とほぼ同じである)

 

【「結婚・出産しているのは正規雇用者」という現実】

・これまで未婚化が進んだ背景には、男性の所得が下がったことや非正規雇用の問題があるとされてきた。

・だが最近わかってきたのは、女性でも、非正規や無業の人よりも正規雇用の人の方が結婚する確率が高いということだ。

・さらに、非正規と正規の人を比べると、出産している人が多いのも正規雇用の人である(現在の状況ではなく結婚前、出産前の状況を比較した場合)

・正規雇用者はより所得が高く、出産や育児支援の制度が整っているからだと考えられる。

・パートナーとなる女性の経済力を気にする未婚男性も増えてきている。

 

・男女ともに安定した雇用と経済基盤がなければ、家庭を持つことは難しい。

・しかし、社会も「女性は結婚すればなんとかなる」と、女性の働き方を軽んじてこなかっただろうか。

・そして、非正規や無業の女性たちを「見えない」存在として扱ってきたのではないだろうか。

・かつて就労支援機関に来る相談者は男性ばかりだったが、最近では女性も来るようになっている。

・しかし、実は支援機関が40代の相談も受け付けるようになったのは、やっと昨年からである(しかもいくつかの支援機関のみである)

・非正規で働いている人は仕事を休むと収入がなくなるため、就労支援の窓口に来るのも職業訓練を受けるのも難しい。

2019年のGW10連休で仕事が休みになり、収入が途絶えて食べていけない、と悲鳴を上げた非正規の人たちのことを思い出していただきたい。

・人生100年時代といわれる今、40代の女性は人生の半分を生きたにすぎない。

【まとめ】

・これからの残り半分以上の人生をどう生きるか、どう生きたいのか、本人たちが人生を主体的に切り開いていけるようにするために、彼女たちに寄り添った支援が必要である。

・このままでは、2040年には彼女たちは貧困状態の高齢者女性となる可能性がある。私たちには、彼女たちの問題が見えているだろうか。

・残念なことに、「女性の活躍・輝く女性」というキャッチフレーズが飛び交う中で、最初の職が非正規という女性の割合は依然として上がり続けているのが現実だ。

1992年から1997年に初めて仕事に就いた女性の約25%は非正規だった。

・それが20年後の2012年から2017年に初めて仕事についた女性の非正規比率は、試算してみると約44%になっている。

・その後、彼女たちは安定した正規雇用に変われただろうか。

・これでどうして女性が安心して結婚し、子どもを産み育てることができるだろうか。

・女性を安い労働力として扱い続けることが、さらに未婚化を進め、少子化を加速させ、「無子高齢化」社会を招いている。

・こうやってますます私たちの社会の存続可能性が脅かされているのだ。

・就職氷河期を経験して、若者を使い捨てにする社会がどんなことになるかを痛感しているはずである。

・過去は変えられなくとも、現実を直視し、未来を変える力が彼女達にあると信じたい。

【感想】

・ロスジェネで就職がうまくいかなかった人は、非正規で働いたり引きこもりになったりしています。

・彼女達には、結婚なんて考えられないし定年後はもっと考えられない。

・そんな世代をほっといて、外国人雇用に力を入れている現状を矛盾と思う。

・弱者消費社会。

・これが今の日本であり持つものがより利益を得る為に持たざるものを土台にする。

・いわば奴隷を作っている。

・国だって、もっと前から分かっていた筈なのに。

・政治家達は高い給料貰って、何をしていたのでしょうか?

・不景気を理由に若手の正社員の給料を低く抑えてきた、政府や企業の責任は重いと思います。

・今後変わって欲しいと思うのですが、年金支給を何とか抑制したい政府、終身雇用はやめにしたいとした経団連では期待が薄いでしょう。

・最低賃金の引き上げにいまだ反対している日本商工会議者などをみると、残念ながらまだまだ解決の道は遠いと感じます。

 

20190807

 

 

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