Vol.128【漫画 小山ゆうの「チェンジ」②】の続きです。

 「チェンジ」は、「小山ゆう」さんが描いた、高校球児たちを主人公とした野球漫画ですが、野球漫画でありながら「ファンタジー」であるという、実に不思議で、しかも、感動的な漫画です。

 物語の要旨は次のとおりです。

 足が悪く家族には疎まれている車いす生活の幼い少女「早」(さき)は、自分にはできない野球をしていることを夢想することがたった一つの楽しみでしたが、トラックにはねられて死にます。そのあまりにも短い人生を悲しんだ死神の自己犠牲により、早は49日だけの命を与えられ女子高生としてよみがえり、仲間と一緒に夏の高校野球県大会を戦います。

 早は明るく元気で心の優しい、だけど負けん気が強い美少女です。幼い少女から高校生としてよみがえったので、最初は心は幼いままで天真爛漫でしたが、日を追うごとに心が成長し、人を思いやる優しさや異性を恋する気持ちが急速に育っていきます。

 

 前回に引き続き、あらすじをお話しします。前回は、若い死神が、幼い早の亡骸を抱いて黄泉の国へ向かうところまでお話ししました。

 

 「この子は、親の愛も知らず、友達も知らず、ずっと車イスで一人ぼっちで・・・これじゃあんまりこの子が・・・」と大声で泣いている若い死神に、年寄りの死神は「うるさい!いい加減にしろ!これからきびしい所を通過するんだ!」と怒鳴っています。

 「ふーっ、やっと抜けた」と年寄りの死神は安どの声を上げました。そこは私たちが見たこともない場所です。下は雲のようなもので覆われており、向こう側に巨大な渦のようなものがあります。他の死神が大勢集まっており、それぞれ、死んだ人を抱えています。年寄りの死神は、遠くの渦の方を見て「あとはゆったりとあれに乗って49日の旅だ」と言っています。出発の時間になり、年寄りの死神が若い死神に「おい行くぞ!」と声をかけます。若い死神は思いつめた顔をして動こうとしません。そして小さな声でつぶやきました。「あのうわさは本当なのですか?・・・私たちには、この霊魂に49日だけの仮の命と肉体を与える能力があると・・・」。年寄りの死神が「ああ、できるとも」と答えました。若い死神は「どうすればできるんですか?」と聞きます。年寄りの死神は答えます。「かれこれ40年以上前になるが・・・一人それをやったバカがいた。そりゃあ悲惨だった、もがき苦しんでな。49日間もだえ苦しんで死んでいったよ・・・」。若い死神は、なおも「だから、どうすればできるのですか?」と静かに質問します。年寄りの死神はあっけにとられて「分からん奴だなこいつは!霊魂に49日間の命と肉体を与えるために、お前の残りの寿命を49日に切り刻むんだ!分かったか!」と大声を出します。若い死神は負けずに大声で「だからどうすればそれができるのかと聞いているんです!お願いです、教えてください!」となおも質問します。年寄りの死神は言います。「やれるもんならやってみろ!お前が命を捨てると言うんならやり方は簡単だ!」。そして遠くにある不気味な山を指さして言います。「あの頂上にある無間地獄の空洞にその子を抱いて飛び降りればいい!」。

 しばらく考えていた若い死神は、やおら、早を抱いて不気味な山を目指して飛んでいきました。他の死神は「ほんとにやる気か」「おい、やめろ!」と口々に叫んでいます。

 若い死神は山頂に着きました。目の下には巨大な空洞が広がり、強い風が「ゴーッ」というものすごい音を立てて渦を巻き、閃光が閃いています。

 若い死神は胸に抱いた早に「健康な足で思いっきり野球をやってこい。友情というものを知ってこい!そして・・・恋をしてきなさい・・・たった49日間だけど・・・」「しっかり生きてくるんだぞ!」と涙ながらに話しかけます。そして、空洞に飛び降りました。その瞬間、体が「メリッ」と音を立てました。「ひーっ!」「ひぎゃー!」「くはっ!」と若い死神は叫び続けます。信じられない苦痛です。

 

 ある高校のグラウンドに、突然、制服姿の女子高生が出現しました。その子はきょとんとして「あれ?ここはどこ・・・私は誰だろう?・・・」と戸惑っています。そして手を叩き合わせて、笑いながら「あっ、そうだった!この高校の野球部に入って、甲子園に出場するんだった」と言いました。「よーし、頑張らなくっちゃ!」と跳ね回っています。

 

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(以下次回→時期は未定)

 

※ 「X」に画像を投稿しました(2025.6.25)。

https://x.com/A4xHEbpzkB44017