「裂けた旅券(パスポート)」という漫画は、「羅生豪介(らもうごうすけ)」(以下「ゴースケ」と言います)という日本人の男を主人公とする、ヨーロッパの政治や経済の裏の世界を舞台にした「国際的社会派漫画」と言えます。
また、この作品は、35才の日本人の男であるゴースケと「マレッタ・クレージュ」(以下「マレッタ」と言います)という13才のフランス人の少女(年齢は二人が出会った時のもの→年齢差22才!)の愛の物語でもあります。
この作品を「国際的社会派劇画」の側面から見れば、例えば、当時のソヴィエト連邦と西側諸国の諜報合戦や中東紛争などを題材としたストーリーは超一流のものであると思いますが、私は、あえて「ゴースケとマレッタの愛の物語」としての側面に注目して、私が好きな回のあらすじなどをご紹介したいと思っています。
裂けた旅券(パスポート) - Kenの漫画読み日記。(お借りしました。ありがとうございます。)
前回は、第11話「ブローニュの金曜日」で描かれた、売春をして暮らしていたマレッタと浮き草(デラシネ)のような暮らしをしていたゴースケの、最悪な形での出会いについて、その概略をお話ししました。
今回は、ゴースケとマレッタが運命のように出会ったこの回のあらすじををご紹介します。
《第11話 ブローニュの金曜日》
ある日、パリの街角で「ジャン」という若い男が、通りすがりの車から撃たれて死んだ。ジャンの商売は「女衒(ぜげん)」(女に売春などをさせて手数料をかせぐ商売)であった。
フェサンドリ警察署の署長が、ブローニュの森で売春をしていたマレッタを、売春行為の現行犯で逮捕した。「なんだい、マルタンの親父かァ。ちぇっ、ついてないな、かきいれ時の金曜だっていうのに」と毒づくマレッタに対して、署長(以下「マルタン」と言います)は「先週、たんとお説教したはずだぞ、マレッタ」と言っている。そして、まだ寝そべっている客の男の足を蹴りながら「いつまで寝そべってやがんだ。お前も逮捕されたいのか!?」と言った。男は起き上がり、「久しぶりに会った友人に言うセリフがそれか、ええマルタン?」と言い、マルタンは「お前か!ラモー。やれやれ何の因果だよ!」と言っている。
場面は変わってフェサンドリ警察署である。「しかし、なんだな。警察署長自らブローニュの白狐狩りたあどういうこったよ」と言うゴースケを横目で見て、マルタンは「ふうむ・・・お前ならできるかもしれん・・・」とつぶやいた。何か考えがあるようである。「よし!今夜のことは大目に見てやる。そのかわり俺の手助けをしろ!。マレッタは・・・お前が抱いた女はまだ13才だぞ、くそったれが!」と言うマルタンの言葉に、ゴースケは「・・・驚いたね」と絶句している。
警察署の死体安置室で、マレッタが死体の確認をしている。「ジャン・ベネットに間違いないな」「うん」。検死が終わったマレッタのところにマルタンが来て「マレッタ、こちらがお前の保証人になってくれるゴースケ・ラモー氏だ」とゴースケを引き合わせた。「あら?アンタが?」とマレッタは言っている。
警察署からの帰り、川沿いの道を歩いているゴースケとマレッタの会話である。
マレッタ:亭主面してたよ。フン・・・せいせいした
ゴースケ:生まれは?
ゴースケ:ずっとブローニュの森で稼いでいたのか
マレッタ:あたいの年で働けるとこが他にあるかい?
(なんという境遇でしょう。「トー横」、「グリ下」、「警固公園」などに集まってくる少年少女のことが頭をよぎります)
(続く)
※ 「X」に画像を投稿しました(2025.4.13)。
https://twitter.com/sasurai_hiropon
(次回に続く→時期は未定)