私は現在69才です(2025年3月現在)。私は、平成3年(1991年)から平成29年(2017年)まで合気道の稽古をしていました(仕事の都合で途中2年間休んでいますが)。最初のうちは、いろいろな技の型を覚え自分でも動けるようになることに精一杯でしたが、有段者になり更に稽古に励んでいると、よく耳にする「残心」と「先の先」というものは何だろうという疑問が湧いてきました。私は決して合気道の実力があるわけではありませんが、今回は、長い間稽古をしていて自分なりに到達した「残心」と「先の先」についての考えについてお話ししたいと思います。

 まず「残心」ですが、wikipediaの記述を引用させていただくと、「武道における残心とは、技を決めた後も心身ともに油断をしないことである。たとえ相手が完全に戦闘力を失ったかのように見えてもそれは擬態である可能性もあり、油断した隙を突いて反撃が来ることが有り得る。それを防ぎ、完全なる勝利へと導くのが残心である」と記述されています。

 ネットで検索すると、「残心」について上記のような主旨の記述が多く見られますが、長く合気道の稽古をしてきて、私の心の中に、ある疑問が大きくなってきました。それはどのようなことかというと、「確かに技を決めた後に油断をしないことは重要なことだ。しかし、相手が最初に攻撃をしてくるときに油断をしないことはもっと重要なのではないか。なぜ技を決めた後のことばかり言うのだろう」ということです。

 合気道には、「正面打ち」の「一教」、「二教」、「三教」、「四教」という技があります(基本的な動きは共通しています)。この技がどのようなものかと言うと、相手が空手チョップのような攻撃をしてきた時に使う技です。余談ですが、実際に空手チョップで攻撃してくる人はあまりいないと思いますが、合気道は「剣」による攻撃に対する動きが基となっているのでこのような形になっています。正面打ちの「一教」~「四教」という技を口で説明するのは難しいのですが、新進の合気道家である「白川竜次」先生が書かれた「美しい合気道」(KADOKAWA:刊)という合気道の解説本には、正面打ちの「一教」~「四教」を含め合気道のいろいろな技について写真入りで分かりやすい解説があり、特筆すべきは、各技のページに「QRコード」が付いていて、それを読み込むとそれぞれの技の動画が見れます。よろしかったら参考にしてください(よくイメージがつかめます)。

 

[白川竜次先生 一教(変化)]

 

 お話の続きですが、私が通っていた道場にもポツポツと未経験の方が入門してきていたのですが、そのような方が最初に習う技は「一教」です。そのような初心者の方は、先輩の技を見よう見まねで自分でもやるのですが、最初は、相手が打ち込んできた後に一瞬遅れて動き出すのです。相手が打ち込んでくるのを「見て」から自分が動くのですから、これは仕方ないことです。しかし、これでは攻撃してくる相手が振り下ろす腕とそれを防ぐ自分の腕がまともにぶつかってしまい「ガスッ」という状態になってしまいます。この状態で相手の腕を押し返したとしても、それは「腕力」で押し返しているにすぎず、合気道の技ではありません。私も初心者の時には、一番基本的な技である「一教」という技がうまく出来ませんでした(単純ですが一番難しい技なのです)。

 私が教えていただいていた先生は「横田愛明」(以下「横田先生」と言います)という本部道場の師範の方でした。横田先生は、海外でも名前を知られている高名な師範です(長年、このような方の教えを受けることができたことは私の幸せです)。横田先生は、日頃の稽古では、自身が模範演技をしてその後生徒に自分でやらせるということを繰り返すのみで、(もちろん体の動かし方などは丁寧に教えてくださいます)、動きの裏に隠れた心の動きの察知方法などは教えてくださいませんでした。今になって思えば、それは当然のことで、言葉で表せることではなく、地道な稽古の繰り返しの中で自分で会得するものだからです(分かりにくい表現で申し訳ありません。言葉で表しにくいのです)。

 

※ Xに画像を投稿しました(2025.3.24)。

https://x.com/sasurai_hiropon

 

(以下次回→時期は未定)