Vol.112【漫画 三丁目の夕日 夕焼けの詩③】の続きです。

 長く連載が続いているこの漫画の話の数は1,000編を超えています。その中でも私が好きな作品について、順不同でご紹介したいと思います。

 

《干(ほし)いも兄ちゃん》(第3巻)

 この話は、「鈴木オート」の従業員として「星野六郎」(以下「六ちゃん」と言います)が中卒の集団就職でやってくる話です。映画「ALWAYS 三丁目の夕日」では「星野六子(むつこ)」という女の子に設定が変更されていました。「むつこ」なのに「ろくちゃん」と呼ばれていましたね。

 以下、あらすじです。

 

 鈴木オートの社長(といっても個人営業の自動車修理屋ですが)であるお父さん(以下「お父さん」と言います)は、背広を着て洗面所の鏡の前で頭を撫でつけています。「こんなもんかな」とお母さんに聞くと、お母さんは「とても立派よ」と言いながらクスクス笑っています(いつものお父さんは汚れた作業服を着ているので)。お父さんが「星野六郎十五歳、特技は自動車修理、中学を卒業したばかりで自動車が直せるとはね」とお母さんに話しています。

 上野駅です。六ちゃんは、集団就職で上京した同級生たちに「おいら自動車会社に勤めるだよ。みんなドライブに連れてってやっからよ」と笑いながら話しています。引率の先生が六ちゃんに話しかけます。「あー星野君、この方が鈴木オートの社長さんだ。社長さんが迎えに来てくれるなんてよかったね」。六ちゃんはお父さんに連れられて行きます。「向こうに車を停めておいたからそれで帰ろう」。六ちゃんはどんな立派な車かとワクワクしてついて行きましたが、停めてあったのは古びたオート三輪でした。二人はオート三輪に乗り、走っていきます。「ずいぶん遠いんだなあ、小さな家ばかりになっちゃった」と六ちゃんは思っています。

 「さあ着いた、ここだよ」。目の前にあったのは小さな自動車修理屋でした。大きな自動車会社だと思っていた六ちゃんはがっかりしてしまいました。

 家に入り、お父さんはお母さんに六ちゃんを紹介します。「うちに来てくれる星野六郎君だ」。お母さんはニコニコしながら「よろしく」と言いました。鈴木家の一人息子の一平も「・・・こんにちは」とあいさつしました。お母さんは、二階に建て増しした部屋に六ちゃんを案内します。部屋はまだガランとしています。荷物を置いて座り込んだ六ちゃんは、ほしいもをかじりながら思います。「あーあ、さえない会社に勤めちゃったなー」。ふと気が付くと、一平が部屋をのぞいています。六ちゃんは「た、食べるかい?」とほしいもを差し出しました。モジモジしていた一平は、ほしいもを手に取り「なにこれ、へんなの」と言いました。六ちゃんは答えます。「かあちゃんが作ったほしいもだよ」。始めは戸惑っていた一平もほしいもを食べ始めました。「ハハハ、おいしいかい?」。「うん」。一平はニコニコしながら食べています。

 翌日・・・。さっそく仕事です。作業着を着た六ちゃんはマゴマゴしています。お父さんが言います。「おーい、ジャッキを取ってくれ」。六ちゃんは何のことか分かりません。「ジャッキを知らないって。自動車修理が得意なんじゃないの?」。「えっ、おいら自転車しか直せないだよ」。「そんな馬鹿な、この履歴書にだって・・・」。六ちゃんは言います。「ほれ『自転車』修理って書いてあるじゃねえだか」。履歴書には「『自動車』修理」と書いてあります。お父さんはガーンとなりました。「漢字が間違っている・・・」(自転車を自動車と書いていたのでした)。

 「そこの赤いのがジャッキだ。いやそれじゃない。違うよそれは!それはトンカチじゃないかバカ!」。お父さんの声が荒くなります。お父さんは思います。「こんなの雇うんじゃなかった・・・」。六ちゃんは涙を流して思います。「こんなとこ勤めるんじゃなかった・・・」。

 お母さんが六ちゃんの部屋の掃除をしています。ふと部屋の隅を見ると、風呂敷包みから何かがはみ出しています。それはけん玉やコマなどのおもちゃでした。お母さんは思います。「まだ遊びたい頃なのに、家から離れてひとりで働いて・・・」。

 しばらく月日が過ぎました。六ちゃんが一平と遊んでいます。「一平もすっかり懐いたわね。兄弟みたい」とお母さんが言いました。お父さんは言います。「わしもどうかしてたよ。人を使うなんて初めてだから。バカにされちゃいけないとムキになって」。お母さんは言います。「家族が一人増えたと思って、仲良く暮らしましょう」。

 六ちゃんは田舎の母親に手紙を書いています。「えーと、かあちゃん元気ですか。おいらも元気で頑張っています。ここの人たちもみんな親切で優しくて・・・」。

 

(次回に続く→時期は未定)

 

※ Xに画像を投稿しました(2025.1.5)。

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