Vol.100【アニメ 今敏監督の「パプリカ」①】の続きです。
今回以降は、私が「パプリカというアニメは凄い」と思っていることを順不同でお話ししようと思っています。そのために、今回、メモを取りながらこの作品を再度見直してみたんですが、お話ししたいことが20項目以上になってしまい、改めてこのアニメの凄さが分かりました。アニメーションという手法を取りながら、一編の「映画」としても完璧な作品なのではないかと思っています。世界的に有名になったクリスファー・ノーラン監督は、自身の監督作品「インセプション」について、「パプリカにインスピレーションを受けた」と語っているそうです。
《インセプション 予告編》
まずは、物語の骨子をお話しします。
「精神医療総合研究所」の優秀な心理学者兼サイコセラピストである「千葉敦子」は、天才科学者「時田浩作」が発明した、夢を共有する装置「DCミニ」を秘密裏に使い、美少女「パプリカ」の姿となって患者の夢に入り込み心の治療を行っていた。ある日、研究所から複数のDCミニが盗まれ、何者かがそれを悪用して、他人の夢に侵入し精神を崩壊させるという事件が発生する。千葉敦子、時田浩作、刑事の「粉川利美」は、犯人を特定するため奔走するが、事件は、「夢が現実を侵食する」という想像も出来なかった方向へ広がり現実の世界を破壊していく。
以下、私が「パプリカというアニメは凄い」と思っていることを順不同でお話します。私の筆力で、どこまでこの作品の魅力をお話しできるか心もとなく、舌足らずのところがあるとは思いますが、どうかご容赦ください。
1 現実の世界と夢の世界の双方をリアルな作画で表現している
主人公を始め登場人物の全てが、そのまま実写映画に置き換えられるぐらい写実的に描かれており、背景(車、建物、風景など)も極めて写実的に描かれています。また、夢の中に出てくるもの(市松人形、西洋のドール、遊園地、パプリカが変身する孫悟空・ティンカーベル、背景など)も、それぞれは極めて写実的に描かれています。だからこそ、現実と夢の境目が見分けづらく、また、夢の中に出現するものは場違いな状況に出現するので、いっそうシュールな感覚を覚えます。作画監督は「千と千尋の神隠し」、「もののけ姫」、「君の名は」の作画監督を務めた「安藤雅司」さんです。
《オープニング》
《いつの間にか夢の中の遊園地にいる》
2 登場人物がキャラ立ちしている
それぞれの登場人物が個性的でありながら、どこにでもいるような姿をしています。千葉敦子は頭脳明晰で冷静な美人、千葉敦子の分身のパプリカは18才ぐらいの天真爛漫な少女(を装っている)、時田浩作は信じられないくらいの大食漢で首の周りの肉がはみ出すぐらい太っていて、天才的な頭脳を持っているが子供がそのまま大きくなったような性格、刑事の粉川利美はいかにも敏腕刑事という感じの体格のいい苦み走った中年の男、研究所長の「島寅太郎」は小柄で頭が禿げた快活な男(じいさんに見えるが粉川利美と大学の同期)、研究所の理事長の「乾精次郎」は、表情に乏しく辛辣な発言をする下半身不随の老人・・・といったところです。それぞれの登場人物は現実の世界では常識的な行動をしますが、夢の世界では、信じられないような行動をとるのです。
《粉川警部が敦子を救出》
3 場面の転換がスピーディである
一つの場面が長くても数秒で転換するので、物語の展開が非常にスピーディで、見ていると、知らないうちに画面に引き付けられます。しかも、どの場面も静止画で見ても鑑賞に堪えられるぐらい密度が濃い。さらに、編集に細心の注意を払っているのでしょう、無駄なシーンが一つもありません。まるで黒澤明監督の映画のようです。
《パプリカ出動》
《The SATOSHI KON PROBLEM》
以下、次回とします。
※ Xに画像を投稿しました(2024.9.13)。
https://twitter.com/sasurai_hiropon
(次回に続く→時期は未定)