皆さんは、今から約20年前(2024年現在)に公開された「ULTRAMAN」という映画をご存じでしょうか。この映画は興行的には不振であり、次々と新作が作られるテレビシリーズの陰に埋もれてしまった作品ではないかと思っています。

 私は昭和31年(1956年)生まれで、10才の時にテレビシリーズ「ウルトラマン」(初代)をリアルタイムで見ています。このシリーズは、多彩な怪獣が毎回出てきて、子供心にワクワクしながら見ていたのはもちろんですが、単なる「ウルトラマンが怪獣を倒す」という内容だけではなく、私は、「正義とは何か」、「本当に優しいということは何か」などのことをこのドラマから学んだと思っています。このテレビシリーズ「ウルトラマン」(初代)のことについては、改めて別の稿でお話ししたいと思っています。

 映画「ULTRAMAN」は、テレビシリーズ「ウルトラマン」(初代)の第1話「ウルトラ作戦第1号」をベースにして作られていますが、テレビシリーズが小学生が楽しめるように作られている(もちろん大人が見ても楽しめます)のに対して、映画「ULTRAMAN」は、「かつて少年だったあなたに贈る」というキャッチコピーのとおり、ストーリーがリアルでヒューマニティあふれるものとなっており、観客として大人をターゲットにして作られたものです。

 

 

 なお、この映画では、ウルトラマンのことを、コードネームである「ネクスト」や「光の超人」と呼んでおり、その描き方がとてもリアリティがあります(なぜ「ウルトラマン」と呼ばれるのかは終盤になって分かります)。

 私がこの映画に惹かれる点を、以下、ランダムにお話しさせていただきます。

 

①  「愛」の物語であること

主人公の男と妻や幼い息子との愛、同僚との友情、主人公とネクストとの信頼関係など、人間として忘れてはいけないものをストーリーの根幹に置いています。

 

 

②  「善」と「悪」の対比が鮮明であること

宇宙から最初に飛来した「ザ・ワン」(コードネームです)が徹底した邪悪な存在であるのに対して、ザ・ワンを追跡してきた「ネクスト」(これもコードネームです)が「善」の存在であり、物語のディテールが鮮明です。

 

③  主人公がどこにでもいる男であること

主人公は不慮の事故でネクストと一体となり、ザ・ワンと戦うことになるのですが、「なんで俺がそんな化け物と戦わなければならないんだ!」と苦悩します。

 

 

④  ネクストに変身した後も主人公の意識が生きていること

テレビシリーズのウルトラマンでは、主人公の「ハヤタ隊員」が乗ったビートルが赤い玉と衝突した段階でハヤタ隊員の意識は眠ってしまいますが、この映画では、ネクストに変身した後も主人公の意識は明確で、自分の意思でザ・ワンと戦うのです。

 

⑤  ネクストとザ・ワンの造形が見事であること

ネクストは出現するごとにその姿を少しずつ進化させるのですが、「銀色の巨人」とでも呼ぶべきその姿は「正しいもの」の姿を感じさせます。一方、ザ・ワンは、最初から「悪の化身」のような姿ですが、他の生物(イモリ、ネズミ、カラス)を大量に体に取り込むことによって、劇的に変身していきます。最終形態は、登場人物がつぶやいているように、まさに「悪魔」です。

 

⑥  バトルシーンが迫力があり緻密に作られていること

何回かバトルシーンがあり、どれもが素晴らしいのですが、特に新宿西口の高層ビル群を舞台としたシーンはミニチュアのビル群なども精密に出来ていて、その中でのバトルシーンは圧巻です。まさに円谷英二の遺伝子を受け継いだ作品であると思います。CGを使った空中戦のシーンもスピード感があり素晴らしい。円谷英二さんは、テレビシリーズのウルトラマンのバルタン星人との空中戦を、本当はこのように撮りたかったのかなと思ってしまいます。

 

 

 

⑦  最後の武器はスペシウム光線であること

ネクストの通常の武器は腕から発射する半月型の光線ですが、最後にザ・ワンを倒したのは、やはりスペシウム光線でした。

 

 

⑧  「星川航空」が登場すること

「ウルトラQ」の主人公「万城目淳」が勤務するのは「星川航空」というセスナ機を飛ばす会社でしたが、この映画の主人公が航空自衛隊を退官して再就職したのが「星川航空」でした。なにかとても嬉しいです。

 

⑨  群衆が逃げ惑うシーンがある

円谷英二さんの初期の怪獣映画ではお約束の「群衆が逃げ惑う」シーンがあります。ザ・ワンが出現し、人々が新宿の高層ビル群を逃げ惑うシーンを見て、「これは確かに円谷の映画だ」と思いました。

 

 次回は、この映画のあらすじ(私の感想も挟んで)をご紹介したいと思います。

 

※ Xに画像を投稿しました(2024.7.6)。

https://twitter.com/sasurai_hiropon

 

(次回に続く→時期は未定)