Vol.85【映画 ピエトロ・ジェルミの「鉄道員」②】の続きです。

 「鉄道員」は、1956年に制作された「ピエトロ・ジェルミ」(敬称略)が監督・主演したイタリアの映画です。この作品は、これからも名作として語り続けられる映画だと私は思っています。

 この作品は、長距離鉄道の運転士であるアンドレア・マルコッチとその家族の、残酷で悲しくて、のちに哀しくて暖かい物語です。

 

《鉄道員》

 

 

 登場人物の紹介をします。

アンドレア・マルコッチ:長距離鉄道の運転士

サラ:アンドレアの妻

ジュリア:マルコッチ家の長女

マルチェロ:マルコッチ家の長男

サンドロ:マルコッチ家の次男

レナート・ボルギ:ジュリアの夫

ジジ・リベラーニ:アンドレアの親友

 

 あらすじを続けます。

 場面は、ジュリアの出産の場面に戻ります。

 ジュリアは青い顔をしてベッドに横たわっています。サラや助産婦さんは沈痛な顔をしています。赤ちゃんは死産でした。

 疲れた顔をしたレナートがジュリアの横に体を投げ出して、つぶやきます。「この子のために結婚したのに・・・」。そしてジュリアの頬を撫でようとしましたが、ジュリアは顔をそむけます(私は、ずっとこの場面の意味を分かっていませんでした)。

 マルコッチ家のなかでは、いつもと変わらない生活が続いていました。しかし、少しずつ歯車が狂い始めます。

場面はビリヤード場です。マルチェロがそばにいた男に話しかけています。「うまい話がある。30倍になるぞ」。どうやら、働きもしないで大金を稼ぐ夢を見ているようです。

 場面は変わり、アンドレアは、親友のジジと組んで、長距離列車の運転をしています。陽気なジジは冗談を言ってアンドレアを笑わそうとしますが、アンドレアの表情はさえません。ジュリアとレナートがめったに家に来ないのです。少し前にアンドレアの誕生日に二人が家に来た時も、二人とも押し黙って、せっかく開けたいいワインを飲もうともしませんでした。

 アンドレアは運転しながらジジに話しかけます。「あの晩、せめて1杯だけにして帰っていたら、今頃は孫がいた」。赤ちゃんが死産だったことを自分のせいだと思っているのです。ジジは「ああなる定めだったんだよ」と慰めています。太陽が列車の真正面に来ていて、アンドレアは「いやな時間だ。まぶしくてな」とつぶやきます。カーブにさしかかり、前を見ていたアンドレアの顔色が変わります。「線路に人が!急ブレーキだ!」。ジジが急ブレーキをかけます。フロックコートを着た若い男がこちらを向いて立っています。急ブレーキをかけましたが間に合いませんでした。乗客が列車から降りてきて騒いでいます。女の人の悲鳴も聞こえます。ジジはアンドレアを慰めます。「お前のせいじゃない。不可抗力だ」。アンドレアは答えます。「顔を見たんだ。30にもなっていない男だった」。

 処理が終わった乗務員が運転席のところに来て大声で言います。「10分後に出発だ!交代するか?」。アンドレアは「いや、いい。その必要はない」と答え、ワインをラッパ飲みします(今と時代が違うし、イタリアは子供もワインを飲むので、見逃されていたのでしょう)。アンドレアは長距離列車の運転士であることを誇りに思っていて、こんなことのために運転を交代したくないと思ったのでしょう。

 アンドレアの運転で列車は再び走り始めます。アンドレアは運転しながらも伏し目がちで考え込んでいます(たぶん自殺した男と働こうとしない息子のマルチェロを重ね合わせていたんではないかと思います)。ジジは補佐の仕事をしながらも、時々アンドレアの顔を心配そうに見ています。列車はしばらく走り、駅の近くの切り替えポイントがあるところにさしかかりました。前から別の列車がこちらに向かってくるのを見たジジは叫びます。「赤だ!」。アンドレアは信号を見落としたのです。ジジがとっさに急ブレーキをかけました。向こうの列車は警告の汽笛を鳴らしながら迫ってきます。あわや衝突かと思われた時、アンドレアが運転する列車は停止し、ぎりぎりのタイミングで向こうの列車は別の線路に逸れて行きました。

 

 

 

(以下次回→不定期)

 

※ Xに画像を投稿しました(2024.4.4)。

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