皆さんは「大友克洋」(おおともかつひろ)(以下「大友克洋さん」と言います)という漫画家・アニメーション作家をご存じでしょうか。大友克洋さんが日本及び世界で注目されるきっかけとなったのは、やはり1988年に公開された劇場版アニメーション映画(以下「劇場用アニメ」と言います)「AKIRA」だと思います。AKIRA」が公開される前後の日本の劇場用アニメの状況を顧みてみると、やはり子供向けの作品が圧倒的に多かったということが分かります。しかし、その中にも観客としておとなを対象とした作品も現れてきました。例示をしますと、「ルパン三世 カリオストロの城」(1979年→公開された年:以下同じ)、「火の鳥2772 愛のコスモゾーン」(1980年)、「幻魔大戦」(1983年)、「風の谷のナウシカ」(1984年)、「天空の城ラピュタ」(1986年)、「火垂るの墓」(1988年)、「GHOST IN THE SHELL」(1995年)、「もののけ姫」(1997年)、「パーフェクトブルー」(1998)、「千と千尋の神隠し」(2001年)、「INNNOCENCE」(2004年)、「時をかける少女」(2006年)、「Paprica」(2006年)、「サマーウォーズ」(2009年)などです。

 歴史ある「東映動画」の遺伝子を引き継いだ「宮崎駿」監督(及び「高畑勲」監督)の一連の作品を除けば、1988年という時期に公開されたAKIRA」という作品は、その当時唯一無二の極めて革新的な作品だったと思います。それまでアニメ作品の主流だった、ディズニーに代表される子供向けアニメ作品やスタジオ・ジブリの作品とは全く異なるリアルな作風は、海外の映画業界にも強い衝撃を与えました。

 

 

 劇場用アニメAKIRA」の原作は、1982年~1983年に「週刊ヤングマガジン」に連載された漫画「AKIRA」です。この漫画に先立って、大友克洋さんは、それまでの彼の作風とは異なる作品として、1980年~1981年に、「アクションデラックス」に「童夢」(単行本化にあたり100ページ近くを加筆)を、「漫画アクション」に「気分はもう戦争」を連載しています。

 漫画「AKIRA」は、可視化が難しい超能力を絵で表現し、近未来の退廃と崩壊を描いたSF作品として、国内ばかりか海外でも高い評価を獲得し、世界中に熱狂的なファンを持つに至りました。

 大友克洋さんは、漫画「AKIRA」を執筆してからは、その活動の場を徐々にアニメーションに移していき、漫画作品の発表は極端に減少していきました。

 

 少し前置きが長くなりました。

 「童夢」や「AKIRA」以後の大友克洋さんのファンの方には申訳ないのですが、今回、私が話したいのは、それらの作品以前の大友克洋さんの漫画作品についてです。

 大友克洋さんは、1973年に週刊漫画アクションに掲載された「銃声」という短編で漫画家としてプロデビューしました。それ以降、主として週刊漫画アクションを発表の舞台として、多くの短編漫画を発表してきました。それらの作品のうちの多くは、どこにでもある街の風景の中で展開される「貧乏くさい」(失礼!)地味な作品でした。

 私は、その当時に発刊された大友克洋さんの単行本を3冊持っています。「ショートピース」(1979年 奇想天外社)、「ハイウェイスター」(1079年 双葉社)、「「さよならにっぽん」(1981年 双葉社)です。これらの作品集に収録されている作品は、どれも、描線が細く、背景が隙間だらけで、「貧乏くさい」話が展開します。しかし、私は、この時代の大友克洋さんの作品が持っていた独特の空気感が、今でも好きなのです。

 次回は、この時代のいくつかの作品を取り上げて、その内容についてお話ししたいと思います。

 

※ Xに画像を投稿しました(2024.3.2)。

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