Vol.63【音楽 忌野清志郎②】の続きです。

 前回は、1994年に放映された「ボクの就職」というテレビドラマに忌野清志郎さん(以下「清志郎さん」と言います)が出演していたところまで話しました(年代的には順不同です)。

 清志郎さんのことを話す時に、どうしても話さなければならないことがあります。それは、いわゆる「夜のヒットスタジオのFM東京事件」についてです。少し長くなりますがお付き合いください。

 清志郎さんは「RCサクセション」のメンバー(というか実質的なリーダー)として長く音楽活動をしてきました。RCサクセションは1968年に結成された歴史のあるバンドです。音楽スタイルとしてはいろいろな変遷を経ているのですが、ロックバンドになって1980年1月にリリースしたシングル「雨あがりの夜空に」が大ヒットとなり、それからは誰でも知っている人気ロックバンドになりました。

 

 

 RCサクセションは1988年に「COVERS」というアルバムをリリースする予定でした。このアルバムは、洋楽のヒット曲に清志郎さんが作詞した日本語の歌詞を乗せる(全曲)という画期的なアルバムでしたが、結果的には発売元のレコード会社の判断で発売中止(「上記の作品は素晴らしすぎて発売できません」という新聞広告が出た→なんのこっちゃ)になりました。収録曲の中には、Vol.63でもお話しした、心を打つ歌詞を乗せたジョン・レノンの「イマジン」もありますが、核開発を暗に批判した「ラブミーテンダー」(原曲はエルビス・プレスリー)と原子力発電を暗に批判した「サマータイムブルース」」(原曲はザ・フー)が問題視されたからでした。発売中止というこの出来事はニュースでも大きな話題となり、このアルバムは結果的には別のレコード会社から発売され、アルバムチャート1位になりました。

 

 

 

 

 ただ、清志郎さん以外のRCサクセションのメンバーは、このような音楽について乗り気ではなく(その前から不協和音は出ていたそうですが)、結果として清志郎さんは、自由に音楽ができるバンドとして「タイマーズ」を結成したそうです。

 タイマーズは「忌野清志郎によく似ている“ZERRY”という人物」が率いる4人組の覆面バンドでした。土木作業員風衣装やかつての学生運動を思わせるヘルメットなどの奇妙な格好をして、権威をおちょくる風刺的な曲で異彩を放ちました(ただ、「デイ・ドリーム・ビリーバー」のようなしみじみとした曲もあります)。

 

 

 

 タイマーズは、1989年10月13日に、歌番組「夜のヒットスタジオR&N」に出演しました。夜のヒットスタジオという歌番組は、毎回有名な歌手やバンドが多く出演し生放送される人気番組でした。彼らが演奏する曲は、予定では「タイマーズのテーマ」→「偽善者」→「デイ・ドリーム・ビリーバー」→「イモ」→「タイマーズのテーマ(エンディングバージョン)」の順でしたが、1曲目を歌い終わり2曲目の「偽善者」というテロップが流れたところで、彼らは全く違う歌を歌い出したのです。その歌詞は「FM東京 腐ったラジオ FM東京 最低のラジオ 何でもかんでも放送禁止さ」で始まり、FM東京を強烈に罵倒するものでした。司会の古舘伊知郎さんは、彼らがリハーサルと違うこの曲を歌うことを全く知らず、彼らの演奏終了後に緊張した面持ちで「放送上不適切な発言があったようでございます。お詫びして訂正させて頂きます」とカメラに向かって述べました。

(続く)

 

(2分15秒あたりからです)

 

(以下次回→時期は未定)

 

※ 「X」に画像を投稿しました(2023.9.30)。

https://twitter.com/sasurai_hiropon