1970年(昭和45年)の「週刊少年マガジン」と「別冊少年マガジン」のことについてお話しします。

 週刊少年マガジンは1959年に創刊された最も歴史のある漫画週刊誌の一つです(同じ年に「週刊少年サンデー」も創刊されました)。長い歴史の中で、その時代時代で数々の名作を生み出してきました。

 私のこどもの頃に連載された作品で印象に残っている作品は、「ちかいの魔球」(ちばてつや:敬称略、以下同じ)、「8マン」(桑田次郎)、「紫電改のタカ」(ちばてつや)、「丸出だめ夫」(森田拳次)、「ハリスの旋風」(ちばてつや)、「ゲゲゲの鬼太郎」(水木しげる)など、列挙していたら切りがありません。

 また、私が少年から青年になる頃に夢中で読んだのは、やはり「巨人の星」と「あしたのジョー」でした。

 私は、高校生の頃から、「COM」、「ビッグコミックオリジナル」、「ヤングコミック」、「週刊漫画アクション」などの青年漫画雑誌に興味が移っていきましたので、1980年台以降の少年漫画雑誌では、話題になった作品、例えば「がきデカ」、「マカロニほうれん荘」、「ブラックジャック」、「こち亀」などの一部の作品しか知りません(これらの作品も古いですね)。

 どんどん脇道に逸れてしまいそうなので、元に戻します。1970年の「週刊少年マガジン」と「別冊少年マガジン」のことについてです。

 1970年と言えば、私は14才でした。1970年という1年間に「週刊少年マガジン」と「別冊少年マガジン」に掲載された作品は、両漫画雑誌の歴史の中で非常に特異なものでした。

 まずは、この年の「週刊少年マガジン」について話したいと思います。

 1970年の第18号から、山上たつひこさんの「光る風」の連載が始まりました。山上たつひこさんといえば、1974年から「週刊少年チャンピオン」に連載されたキャグ漫画「がきデカ」が爆発的にヒットし、一躍人気漫画家となりましたが、この「光る風」という作品は、がきデカの作風とは全く異なるシリアスなものでした。物語の概要については「Wikipedia」を引用させていただきます。「軍事国家化が進む架空の近未来を舞台とする。「愛国心」という名の狂気へと突き進む政府、狡猾に操る巨大権力、簡単に洗脳され人間性を失っていく国民、抗おうとする若者たちは容赦なく踏みにじられていく」。まさに、このとおりの物語です。このような、青年誌でも掲載がためらわれるような漫画を、よく少年誌に掲載したと思います。物語の中では、主人公の友達が町の中で警官に射殺されたり、生まれた子供の8割が奇形児である村が登場したり、日本政府がある国に対して中性子爆弾の使用に踏み切ったり、デモに参加した主人公が強制収容所に収容されたり、また、軍人である主人公の兄が戦地で両手両足を失いダルマにような格好で帰ってきたりと、衝撃的な場面が連続します。私はまだ14才でしたので、物語の内容を正確に把握することはできませんでしたが、大変な衝撃を受けました。軍国主義化の恐怖をここまで描いた漫画・小説・映画を、私は他に見たことがありません。「シビリアンコントロールの崩壊と軍需産業の拡大である」というト書きはずっと心に残っていました。

 次回は、ジョージ秋山さんの「アシュラ」、辰巳ヨシヒロさんの「いとしのモンキー」、横尾忠則さんの表紙などについてお話ししたいと思っています。

 

 ツイッターに画像を投稿しました(2022.12.23)。

https://twitter.com/sasurai_hiropon

 

(以下次回→時期は未定)